第126話:最終競技・借り『もの』競争!



『さて、本大会も大詰め、最終競技【借りもの競争】がスタートしようとしています』


 福富さんがスタート位置へと移動を始めるころ。


 校内放送がこの競技の模様を伝え始める。


『二年生、三年生はすでにご存知と思いますが、新一年生も居るので、改めてこの競技のルールを説明しておきます』


 ん?


 借り物競争、でしょ?


 借りる物が書かれた紙を拾って、そこに書かれてるものを借りて来るってやつ。


『スタートから二十五メートル毎に封筒の置かれたテーブルが三か所あります。ここから各一通づつ、封筒を取って、その五十メートル先にあるポイントで封筒を開封し、中身を確認します』


 お?


 一枚だけじゃなくて、三つも借りるものがあるの??


 それって大変じゃない?


『このみっつの封筒の中には、それぞれ【学年】【クラス】【出席番号】が書かれています』


 へ?


『その学年、組、出席番号のひとを連れてゴールを目指してください』


 借り『物』じゃなくて。


 借り『者』なの!?


 ぉぅぃぇえ……。


 それって。


 自分のクラスのひとなら協力的に、率先して出て来てくれるだろうけど。


 『敵』である他の学年、クラスのひとだと……。


 これは。


 くじ運?


 まぁ、借り物競争だとしても、突拍子もないものを引いて探し回る事を考えたら、似たようなもの、か、な?


『なお、該当の出席番号のひとが欠席だったり、不在の場合は前後の出席番号のひとを探してください』


 あぁ、まぁ、ランダムだと、そういう事態も、ある、か。


『それでは第一グループからスタートして行きましょう!』


 とりあえず、どんな感じになるのか、様子見。


 学年混成で、各クラス二名なので、六人で四グループ。


 福富さんを含めた第一グループの六人が、スタートラインに並ぶ。


 あたしは三番目のグループなので、後ろに待機。


 その場所から、先頭のグループ……福富さんを見守る。


 そして、競技開始。


 スタートした六人が一斉に走り、ひとつ目のテーブルから封筒を取って、さらに走って次のテーブル、三つ目のテーブルと、ここまではちょっとした『ひとりリレー』の、様相。


 その先。


 封筒を開封するポイントで。


 悲喜、こもごも。


 頭を抱える選手。万歳してすぐに走り出す選手。


 ほとんどのひとは頭を抱えている様子で、福富さんも、そのひとり。


 きょろきょろ、と周囲を見渡して。


 目的の学年、クラスのひと達が居る席へ向かって全力疾走。


 うわぁ……よりによって、三年生かぁ。


 一年ならまだしも。


 これ、上下関係で考えたら、三年生が有利、だよねぇ。


 あぁ、福富さん、三年三組の席の前で叫んでる。


 でも。


 その三年三組の中から、ひとり、立ち上がって、福富さんの元へ。


 その場所で軽く屈伸運動をしてから。


 福富さんの手を取って、逆にその三年生の先輩が率先して、走り出す!?


 なんと。


 すごく、協力的な先輩。


 その先輩に引きずられるような形で、躓きそうになりながらも、福富さんも全力で走って。


 やった!


 二位!


 確認ポイントで万歳してた子は、どうやら自分のクラスの番号を引いたみたいで、一位。


 それに次いで、福富さんは、二位でゴールすることができたみたい。


 他の走者は。


 それぞれ、指定されたクラスには行ったものの、何やらトラブルとまではいかないまでも。


 若干、手こずった感じで、少し遅れぎみ。


 総合ポイントで、見ると。


 このレースで一位のクラスは、総合では下位の方なので、総合順位には大きな影響は、ない。


 逆に、総合上位のクラスが逆に今のレースでは、下位。


 なので、二位になった福富さんの活躍もあって。


 あたしのクラスの順位が、上がった!?


 総合、二位!?



 え。


 これって、つまり……。



 あぅ……。



 緊張、してきたよ。




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