第125話:東雲女子高校・秋の体育大会



 体育大会の準備委員のお仕事も無難にこなして。


 当日も、あれやこれやのお役目もありつつ。


 他の委員さんとも分担して、ひと息つける時間も、あり。


 ちなみに、だけど。


 東雲女子高校の『体育』は、いわゆる『体育』とは違って。


 平日に行われるし、保護者をはじめ、外部のヒトが立ち入る事はできず。


 完全に学校内だけの、企画イベントなのです。


 だから、競技もあまりお祭り的なものは多くなく。


 短距離走、リレー、高跳び、幅跳びとか。


 スポーツテストみたいな雰囲気。


 イベント的な要素としては、最後に『借りもの競争』があるくらい?


 あたしはこの『借りもの競争』にエントリーいる。


 一応、クラス毎にポイントがあって、学年関係なく、クラス単位での順位とかが集計される。


「なんかうちのクラス、良い感じの順位じゃない?」


 そう。


 大会も終盤、大詰め。


 今、行われている四百メートルリレーで好成績なら、二年、三年の先輩方を差し置いて、総合五位以内。


 なんと、一年ではトップ!


 それが。


「やった! 二位!」

「おぉおお!」

「総合四位っ!」


 あはは。


 周囲のクラスメイトが、大騒ぎ。


 あたしもつられて。


「やったぁ!」


 なぁんて。


 クラスメイトと一緒に、はしゃいでしまう。


 そして、そんなクラスメイトの中の誰かが。


「最後の借りもの競争でトップなら逆転優勝もあり得るね!」


 うっ。


 そうでした。


 最後の種目。


 あたしが参戦する予定の、借りもの競争……。


 まだリレーの何組かは残っているけど、校内放送アナウンスで、借りもの競争の競技参加者はトラックに集まって下さいって。


「借りもの競争って、誰だっけ?」

「福富さんと、あと、えっと……」

「園田さんよ」

「そうだ! 福富さん、園田さん、がんばって!」


 もう一人の借りもの競争参加者の、福富さんは。


「うん、がんばる!」


 と、立ち上がって元気に返答。


 そうなると、あたしも立ち上がって……。


「精一杯がんばります!」


 少し恥ずかしくて、ちょっと小声だけど、そう宣言して。


「行ってきます」

「行ってきます」

「行こっ、園田さん!」

「は、はいっ!」


 福富さんと連れ立って、集合場所へ移動したら。


「あら? 園田さん、あなたも借りもの?」


 ぱっつん子先輩。


「あ、サクラ先輩、お疲れ様です。はい、あたしもコレに」

「ふふ。お手柔らかにお願いしますわ」

「あはは、こちらこそ」


 そんな、あたしとぱっつん子先輩のやりとりに、福富さんが。


(ねぇねぇ、先輩とお知り合いなの?)


 素朴な、疑問、かな。


 学年ごとに体操服の色が違うから、すぐに先輩だってわかるし、ね。


(えっと、例の『八時間目の授業』に参加してる先輩だから、よく知った人、かな)

(あぁ、例の、ね。ウワサは聞いてるよ)

(う……どんなウワサなの?)


 何それ、怖い……。


(園田さんを女の子らしくするためのレッスンをやってるって話)

(あぁ……ある意味、間違いじゃないね)


 苦笑。


 確かに、実態としては、間違ってはいない。


(あの先輩ならお嬢様っぽいから、園田さんの女の子の先生としては適任って感じね)

(まぁ、うん、そうだね……)


 若干、お茶を濁しつつ。


 そうこうしていると、前の競技のリレーも終わり。


 なんか、総合上位のクラスのリレー順位が悪く、うちのクラスがさらに順位アップ。


(総合三位!?)

(うわぁ、これ、わたし達次第で、二位とか、一位とかもあり得る?)


 細かいポイントの計算は難しいけど。


(どうかしら? 今の上位クラスの順位にもよるだろうし)

(そうね、わたしたちはわたしたちで、全力でがんばりましょう!)

(そうだね!)


 周りに他のクラスのひと達も大勢居るので、小声で福富さんと会話。


 そして、すぐに放送部による、校内放送アナウンス


『続きまして、最終競技の借りもの競争です。最初の組はスタート位置に移動してください』


「じゃぁ、わたし、先に行ってくるね!」

「うん、がんばってね!」


 福富さんを、お見送り。


 さて!?



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