第94話:男装女子の難点は女装男子より難易度高いかも


「やっぱり、問題は髪型、よねぇ……」


 エリ先生にそう言われて、ぱっつん子先輩が。


 自慢のぱっつんロングを撫でつつ。


「やはり、切るしかないでしょうか……」


 ぱっつん子先輩以外の全員が、固まる。


「いやいや、いやいや、切っちゃダメでしょ」


 ウチ、全力否定。


 ほかの面々も、全力で首を縦に振りまくり、エリ先生がウチのセリフを継いで。


「そうよ、そこまで伸ばすのにどれだけかかるか、自分が一番よくわかってるでしょ? もったいなさすぎよ」


「ですわよねぇ……」


 さすがに、ぱっつん子先輩も、その髪を切るなんて、って自覚はしてくれてる、よね?


「ジャケットの中に入れて隠しても、全体的に男子っぽい髪型にはならないしねぇ」


 おさげ子先輩も、自身の後頭部付近で束ねている髪を撫でながら感想を述べる。


「ウチは切っちゃってもいいかなーもとがショートだし」


 金髪子先輩もフードを外してキレイな金髪をわさわさ、とかき上げながらおっしゃいますが。


「ダメっ!」

「ダメよっ!」

「ダメに決まってるでしょっ!」


 女性陣、総ツッコミ。


「えー? ベリショーもそれはそれでカワイイと思うけどなー」


 何やら、金髪子先輩は切る気満々になってるっぽいけど。


「ウィッグでどうにかなりませんかね?」


 エリ先生に問うてみる。


「男性が女性のウィッグ付けるのよりちょっと難易度高いかもだけど、無理ではないわね」


 そりゃそうだよね。


 ウチがやってるみたいに、短い髪の上にウィッグを被ったり、エクステンションを付加するみたいに簡単にはいかないよね。


 長い髪を隠そうとすると、ウィッグの中に完全に収めなきゃいけないし。


 それに、今の時期……真夏にウィッグ、さらに地毛を中に収めて、ともなると、蒸れがすごすぎて、何その拷問、状態。


 ウチもそれがあってウィッグを止めて、エクステンションでポニテにしてる訳だし。


「それじゃ、次回は今日借りた服装で自分の服とウィッグとか、見に行きましょうか」


 一応、顧問のエリ先生。


 次回スケジュールの、内容決定と、共に本日の内容も終了なんだけど。


「じゃぁ、慣れるためには今日はこの格好で帰りましょうか」



 え?



「そうだねー、ちょっと楽しみかもー……じゃなくて、楽しみだぜー」

「ふっ、仕方ないな……」


 金髪子先輩とおさげ子先輩は、ノリノリ。

 

「え? この格好で、ですの??」


 ぱっつん子先輩は、さすがにその髪型のせいで、少し、いや、かなりの違和感。


「ボクと同じように後ろでジャケットに入れておけば、多少まし、さ」


 おさげ子先輩が、前髪をかき上げつつ、男子風のセリフでぱっつん子先輩にアドバイス。


「うぅ……仕方ありません、わね……じゃなくて、仕方ねぇな?」


 ……。


 ウチが女言葉使うと、鳥肌モノなんだけど。


 先輩方が、男子言葉だと、なんかカッコイイ?


 それより。


 先輩方が男装状態のまま帰るとなると。


 男装女子三人に混ざって、ウチひとりだけ『しの女』の制服姿!?


 何それ、何の逆ハーレム?


「若林くん、山田くん、ごめん! ウチにも服、貸してっ!」


 あわてて、男装用の服を見繕ってお着替えて。


「ありがと、それから大勢で押しかけてごめんね?」

「まぁ、言い出しっぺだしな。それにオレだけ二回目だし、役得?」

「あはは。そうだね」

「じゃあ、気を付けて帰れよ」

「うん、ありがと」


 先輩方、先生も若林くんにお礼を述べて。


 山田くんも交えて、駅へ向かう。


 まだ、夏の陽は高くて、暑いけど。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る