第68話:偶然にも保土ヶ谷
八時間目の授業、その夏合宿。
夏休みに入り、訪れた金髪子先輩の家の別荘。
一日目を終え、夜の女子会(?)も終えた翌朝。
聞き慣れない鳥の鳴き声に起こされたウチは、その窓の外に不審な人を見かけた。
大きなカメラを担いだ、男女数名。
朝食の準備中だった母さんとシズさんに報告して、対処しようと、玄関へ。
玄関開けて、ダッシュ五秒。
では、無く。
玄関を開けて、そろそろっと、門へ。
門からこっそりと外を覗いてみると、やはり、居た。
若い女性三人と、年配の男性が一人。
女性の一人はそこそこ背が高く、帽子を被っているが、その髪は金髪子先輩に似た、金髪。
もう二人の女性は、背が低く、黒髪。いずれも帽子を被っている。
年配の男性も帽子を被っているが、髪が見えない。
見た感じ、極悪人、と言った風情ではなく。
至って普通のヒト。
普通の、カメラマンさん?
何を撮ってたのかが問題ではあるけど。
でも。
「え? 本多さん?」
母さんがその男性を目にとめ、声をあげる。
「え? 園ちゃん?」
男性も母さんのその声に反応する。
「母さん、知り合い?」
訊ねてみると。
「お母さんの会社の同僚、と、言うか先輩よ」
はぃ?
「ここ、園ちゃんの家だったの?」
男性がこちらに近寄って、母さんへと問いかけると。
「いえいえ、娘の学校の関係で、合宿に付き添いで来てるんです」
母さんもウチの肩を掴んで、それに答える。
てか、娘って……。
「え? 園ちゃん、娘さんなんて居たっけ? 息子さんじゃ??」
「あ」
あ、じゃ、ねぇっ!
「その子……え? え? えぇええ?」
ほらみろ、混乱してんじゃん。
シズさんを見ると、最初の緊張は解けて、やれやれ風の顔と仕草。
本多さんと呼ばれた男性の後ろの若い女性三名は少し遠巻きにこちらをうかがっている。
「えっと、話すと長くなりそうなので、また後日……それより、本多さんこそ、こんなところで何をされてたんです?」
母さんの問いに、本多さんとやらは。
「ここら辺の海岸に撮りたい野鳥が居てね。それを探してたら、別の鳥がこの家の屋根にとまってたから、撮ってたの」
野鳥かぁ。
屋根の上を狙ってたってことか。
たまたま、その正面にウチが泊まってた部屋があった、と。
その鳥の鳴き声、だったんかな?
「そちらのお嬢さんたちは?」
母さんも疑問に思う、年配のおじさんと若い女性三人の取り合わせ。
うん。
何気に、怪しい気配も。
それを言ったら、女性五人の中のウチも
「あぁ、ウチの姪っ娘と、その友達。結構前から一緒にあちこち写真撮りに行ってるんよ」
へー。
本多さんは続けて。
「それにしても、園ちゃんの娘さん……息子さん? 娘さん? 園ちゃん似で、すごくカワイイねー」
お世辞来たー。
恥ずかしいから、もう、部屋に戻ろうかな。
Tシャツとショートパンツにサンダルで出て来ちゃったし。
「でしょ、でしょ?」
母さん。
嬉しそうに、ウチの肩を抱いて。
いや、やめて?
そんな事をしていたらば。
「おじさま、イソヒヨ、抜けてしまいましたわ」
「早ぅ、アオバト探しに行こぅな」
本多さんの後ろの女性が本多さんに声をかける。
「あー、そうだな。朝の内に撮りたいしな」
後ろの女性に答えてすぐ。
「園ちゃん、悪い、ゆっくりも出来んので、また今度」
「はい、お気を付けて」
「じゃ、また」
本多さんとそのご一行。
三脚を肩に担ぎ上げて、去って行く。
去り行きつつ、漏れ聞こえる会話。
「カワサキさんのお知り合いだったんですか?」
「そだよ。会社のヒト。いやぁ、偶然にもホドガヤだよなぁ」
「
「地名だってわかるんだね……」
「ちなみに、保土ヶ谷は横浜ですわね」
カメラマン集団、と、言うよりは。
漫才軍団?
って、言うか。
カワサキさん? ホンダさんじゃなくて??
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