第63話:サンオイル? 日焼け止め?



 どうやら。


 先輩方とエリ先生は独自に水着を新調されていたらしく。


 ウチは『すでに準備済み』って事だったので、水着の買い出しには着いて行かず。


 お互いに、この現場リゾートで、お披露目。


「準備してるって言うから、てっきり」

「うんうん。まさか女装とは」

「フェイントもいいところ、ですわね」


 三先輩はともかく。


「でも……」


 エリ先生が。


「わたしたちより可愛い気がするのは気のせいかしら?」


 先生が自分自身の姿とウチの姿を見比べて。


「気のせいですよ、気のせい。女装男子のウチが本物の女性の……先生にかなう訳、ないじゃないですかー」


 いや、実は。


 ある部分に於いて、勝っている部分が無くも無い。


 偽物が故に、やや過剰に盛られた、とある部分。


 ウチは『B』で、おさげ子先輩とほぼ同等、なんだけど。

 エリ先生と金髪子先輩は、ウチよりも……ね?


 その『B』の『上げ底』は耐水性で、海に入っても大丈夫。


 ウレタン素材が故に、浮き輪のような効果もあるんで潜りにくいよ、と。

 ユキト店長のご注意もあるけど。

 ヒップサイズアップも着けてるので、なおさら浮きやすく沈みにくいか。


 まぁ、溺れないだろうから、いいよね?


 深いところでひたすら泳ぐ訳でもなく。

 水辺、浜辺で遊ぶだけだろうし。



「よーし! じゃあ、サンオイル塗ってあげよう!」


 エリ先生が、わきわきしながらウチに近寄って来る。


「え? 日焼け止めじゃなくて?」

「そうとも言う?」


 目的が全然違うんですけど?

 いずれにせよ。


「あ、水着を着る前に先に日焼け止め塗ったんで、大丈夫です」

「えー……」


 わきわきを停止して、進行も停止するエリ先生は、今度は。


「じゃあ、みんなに塗ってあげよう!」


 わきわきを再開しつつ、進路変更。

 三先輩方へと向かう。


「わたし達も先に塗ってますから、大丈夫です」

「塗りっこしたもんねー」

「ねー」


 珍しく、ぱっつん子先輩が『ねー』とか、可愛らしいセリフ。

 水着で浜辺でテンションが上がってるのかな?


「うっきー……じゃぁ、沙彩さあやさん!」

「わたしも平気ですよー」


 母さんを前に、完全停止してしまう、エリ先生。


 ちょっとかわいそう。


 そして、母さんが。


真綾まあや、先生に日焼け止め、塗ってあげたら?」


「母さんっ!?」


 何を言い出すやら。


 まぁ、夏の浜辺のイベントとしては、定番中の定番かもしれませんけれど?


「あ、大丈夫です。わたしも先に塗ってあるんで」


 せんせーっ!


 こうして。


 夏の浜辺のイベントは、空気を読まない面々によって。


 回避されるのでした。


 ちゃんちゃん。


 って。


 やっぱりまだまだ。


 触れたり触れられたりは。


 お互いに。


 敷居が高い、よねぇ。



 そういう意味においては、やっぱり。


 男子のままの方がよかったのかもしれず。


 ちょっこり、しくじった感もあるけど。



 まぁ、いっか!



「じゃあ、何して遊びましょうか?」




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