第62話:これがウチの水着です



 海辺の別荘の一室。


 男子部屋(ウチひとり)で水着に着替える。


 女子の着替えって時間がかかるって聞くけど。


 百聞は一見にかず。


 体感。


 これは、水着だけに限らず、制服や私服でも、しかり。


 ウチが慣れてないって事もあって、なおさらに。


 でもまあ、お陰様で?


 浜辺ビーチ到着は、最後。


 皆が待つ中へ。


 少し足早に、でも、慌てず、騒がず、ゆるりと、しとやかに。


「おまたせー」


 軽く片手をあげて、水着姿の、お披露目。


「来た来た」

「おそーい」

真綾まあや氏……え?」


 振り返って、ウチの姿を確認して、驚いている皆もまた、それぞれに、それぞれの水着姿。


 金髪子先輩は、レモン色のセパレートで、下はショートパンツタイプ。

 おさげ子先輩は、少し水色がかった青いビキニ。

 ぱっつん子先輩も似た感じのビキニで、色は黒。

 エリ先生は、水色に花柄のワンピース。


 母さんは、ウチとお揃い。


 その、ウチの水着は。


「え? 女性用!?」

「まさかとは思いましたが」

「びっくり。何気に似合ってるじゃない」

「時間かかってたのはそのせいだったのね」

「お母さんとお揃いよー」


 その母さんの隣に並んでみる。


 黒地に白の水玉のワンピース。

 腰にはミニスカートのようなヒラヒラが付いていて、胸元にもヒラヒラ。

 肩は出てるけど、首元を覆うホルターネック。


「お母さまとお揃いって事は……」


 そう。


母娘おやこでドクロ!?」


 皆さん、二度、驚き。


 ウチが女物の水着な事。


 それから、その水着が、遠目に見ると黒字に白の水玉模様。


 白の水玉は、近付いてよく見てみると、実はドクロのマーク。


 先に母さんの水着を見て気付いていたんだろうけど。


「何故に、ドクロ?」


 素朴な疑問に。


「例の女装ショップの店員さん……店長さんのおススメだったんスよ」


 素朴な、回答。


「まぁ、柄はともかく、デザイン自体は可愛いねー」

「うんうん。男っぽさがうまく隠されてる」

「ドクロも遠目に見ればただの水玉ですしね」


 おっしゃる通り。


 肩幅とかはどうしようもないけど、例の上げ底やクッションも駆使して。

 ミニスカートや胸元のフリルで身体のラインを隠しつつ。

 ポニーテールのエクステを肩から胸元に流して。


 一応、スカートが捲れ上がっても中身が違和感無いように見える特別な部品も装備。


 さすがユキト店長おススメの女装水着コーデ。


 ユキト店長、頼れる大先輩。


 ちなみに、なんでドクロかと、ウチもユキト店長に訊いてみたところ。


 ユキト店長の家族の中でブームで、それを流行らせようって事だそうで。


 まぁ、体よく、売り上げ貢献させられた感も無きにしも、だけど?


 でも、意表を突けて、満足!



「まさか水着まで女装で来るとは思わなかったよね」





 あれ?



 今さらだけど。



 なんか。



 違うくない?



 水着まで女装する必要、あったっけ?







 まぁ、いっか!


 とりあえず、夏の海、満喫しましょう!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る