母さんとデート?

第45話:母さんとネットで、ごー



「へぇ、ミリィちゃん家でそんな風にねぇ」


 夜。


 金髪子先輩宅から戻って、母さんと晩御飯の席。


 今日の出来事を報告したらば。


「先週のツグミちゃんとのデートもだけど、うぅん……」


 めちゃくちゃ、イヤな、ヨカーン。


「そうだ、明日の日曜日……」

「イヤだ」


 明日の日曜日、どうせ。


「もぉ、まだ何も言ってないじゃない」

「言わなくてもわかるよ?」


 お母さんとデートしましょう! とか。


「むぅ……お洋服とか買ってあげようと思ったのにぃ」


 ほら。


「お洋服って……女物でしょ?」

「その通りだけど?」


 あ。


「そうだ……実は、ちょっと、相談ごとが……」

「何? なに?」


 前のめりに嬉しそうな、母さん。


「とりあえず、ご飯済ませて片付けてからでいいから」

「もぉ……もったいぶらないでよ」


 ぶちぶち、と、言いながらも晩御飯を済ませ、後片付けも終えて。


 お風呂も済ませてから。


「で、相談って?」

「実は……」


 ウィッグが、暑い。蒸れる。頭、かゆいっ!


「なるほど……」


 春先はまだよかったんだけど。


 さすがに暑くなってきて、一日中着けてると、ねぇ。


「なんかいい方法、無いかなぁ」

「うーん……ネットで調べてみた?」


 いあ。


「どうやって調べていいかぜんぜんわかんなくて」

「そっか……じゃあ、ちょっと待ってて」


 そう言って、母さんが席を外して、多分、自分の部屋へ。


 しばらく待つと。


「お待たせ」


 ノートパソコンを持って戻って来て。


「これで一緒に調べてみましょう」


 と、ウチの前ではなく、横へ並んで、目の前にノートパソコンを置いて。


「えっと、じゃあ、『ウィッグ暑い蒸れる』と」


 母さんがノートパソコンのキーボートをタタタっ、と叩くと。


 画面にずらっと検索結果が出てくる。


 母さんがマウスを操作すると、そのずらっとの下に、さらにずらっと。


「冷感パッド、冷感スプレー……色々と対策グッズもあるのね」


 母さんの目にもとまらぬ、パソコン操作。


 す、すげぇ。


 てか。


「母さん、パソコン使えたんだ?」


 知らなかった。


「会社の仕事、パソコン使うのばっかりだからねぇ」


 そうなんだ……。


 そんな母さん。


 一覧の中から、ぱぱっと別の画面を開いて、ささっと内容を読んでは閉じる。


「たまに家でもこのパソコンで仕事してるのよ」


 そう言いながらも操作は続く。


 どうやら、だいたいが通販サイトみたいで、そういった商品を『カートに入れる』ボタンが付いてるみたい。


 でも、どれも微妙みたいで、母さんの手は動き続け。


 そして。


「部分ウィッグ?」


 ぴたっと止まる。


 そして、ぽつっと、画面の文字を読み上げる母さん。


「エクステ……エクステンション?」


 また母さんがタタタっとキーを叩いて。


 『エクステンション簡単着脱』と入力すると。


 さっきとは、少し違った一覧。


「完全に被るんじゃなくて、地毛に取り付ける感じね」


 あぁ、なるほど。


「これなら蒸れたりするのもちょっとマシかな?」


 髪が長いだけで蒸れそうなのはあるけど。


「この、ポニーテールにすれば、そんなに暑くないんじゃないかしら? ほら、こんな風に」


 母さん自身も。


 そんなに長くはないとは言え。


 お風呂上りってこともあって、髪を後ろでお団子にまとめている。


「いろいろあるみたいだけど、これがよさそうね。値段もお手頃」


 ふむふむ。


「色は、金色にしとく?」


「しないよっ!?」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る