第43話:金髪子先輩のスカート



「大里先輩、中原先輩、エリ先生、すぐ来てもらえますかー? 今すぐ来てくれないと……小坂先輩にイタズラしちゃいますよー」


 金髪子先輩のお宅のリビングにて。


 パーティゲームをするのに、ふたりだと味気ないってコトで。


 ここらへんか? と目ぼしを付けた方に向かって、大声で叫んでみる。


 金髪子先輩に向かって手のひらをわきわき、と動かしながら。


「何それっ!? ちょっと、園っち、正気?」


 ウチが少し接近すると。


 金髪子先輩はドン引き状態で身体を抱きしめ、ソファの上を後ずさる。


 まぁ、当たり前か……。


 しかし。

 

「あれ? 来ません、ね?」


「く、来るわけ、無いじゃないー」


 う。


 どうしよう?


 わきわき、と、両手を金髪子先輩に向けて、じり、じり、と少しだけ接近してみる。


「来ませんね……」

「だー、かー、らー」


 これ以上はやばそうなので、接近は停止。


 わきわきは継続。


「マジ?」

「ま、まじー」


 あれー?


 と、言うことは?


「本当に、ふたりきり?」

「そ、そーだよー」


 えー。


 てっきり。


 隠しカメラか何かで、この部屋の様子を別の部屋から監視? 観察? してるものだと思ったけれど。


 厳密には。


 お手伝いさん……シズさん? がいらっしゃるので、ふたりきりってコトではないのだけれど。


 そうなると、わきわきも意味がないので、わきわきも停止。


「じゃあ、どうしましょう? ふたりでやりますか?」

「うーん……他にふたりでできるゲーム、あったかなー?」


 がさごそ。


 テレビの下のラックの中を漁ろうとする、金髪子先輩。


 後ろ向きで四つん這いの、その格好は……。


 いろいろヤバイので、そっぽを向いて、そちらは見ないように。


 一瞬、ちらっと見た限りでは。


 際どいながらも、スカートの中までは見えず。


 かと言って、注視するのも、はばかられるし。


 悟られないように、明後日の方向を向いたまま。


「何かよさげなの、ありますかね?」


 と、声だけかけてみる。




 ちなみに、だけど。


 『しの女』の制服のスカートを短くしているヒトは、ほぼ居ない。


 何故かと言うと。


 デザインの関係で、スカートを短くすると上半身とのバランスが悪くなってしまって、かえって格好悪く見える。


 なので、あえてスカートを短くするようなヒトは居ない、と。


 それでも短くしているギャルっぽいも全く居ない訳ではないけど。


 金髪子先輩も然り。


 標準的な長さで、ひざ下は他校の制服に比べるとかなり長い印象。


 ここら辺も『しの女』がお嬢様学校と呼ばれる所以ゆえんでもあったりする。


 

「んー、パパのゲームばっかりだから、あんまり良さげなの、無いなー」


「そうですか……」


 そこへ。


 コンコン、と、ドアがノックされる、音。


「お嬢様、お茶はいかがですか?」


 シズさん?


「あ、はーい。ありがとー、お願いー」


 金髪子先輩が答えると。


 すっと、ドアを開けてシズさんが入って来て。


「こちら、どうぞ」


 ささっと、お茶とお茶菓子を置いてくれる。


「ありがとー、シズさん」


 最初はラックを漁りながら、後ろ向きに答えた金髪子先輩だけど。


「あっ! そうだっ!」


 何かを思いついたように振り返って。


「シズさんも一緒に、ゲームやろー」


「はい?」


 きょとん。シズさん。


「はい?」


 きょとん。ウチ。


 ……あり、なのか? それ……?




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