第36話:おさげ子先輩にならう
おさげ子先輩とふたり。
電車を降りて、ホームから改札を抜けて。
「さて、どこ行こうかな……どこか、行きたいとこ、ある?」
おさげ子先輩がウチの顔を覗き込みながら。
「うーーーーん、特には……」
「だよねぇ……わたしも特に……じゃぁ、あっちのビル、適当に見てみましょうか」
駅のコンコースからつながるビル。
色んなテナントが入ってるみたい。
「はい、いいですよ」
一旦、エレベータで最上階まで登って、そこから各フロアを冷やかして周ろう、と。
「いきなり電気屋さんか……」
おさげ子先輩のおっしゃる通り。
エレベータ、降りたらいきなり、電気屋さん。
家電量販店、ってヤツ?
「何か、欲しいもの、あります?」
「あはは、特に無いかなぁ……」
何か買う目的があって来ている訳じゃないから、ね。
とりあえず、フロアをぐるっと周ってみる。
「すごくでかいテレビ……」
「あー……それより大きいの、ミリの家に置いてあるよ」
「ほぇ!?」
ぱっつん子先輩のお嬢様風味から、三人ともそこそこのご家庭か、とは思っていたけど。
「今度、ミリん
「は、はぁ……機会が、あれば……」
そんな機会があるとは思い難かったりはするけど?
「ビューティグッズ、健康グッズ……あ」
おさげ子先輩が何かに食いつく。
「……今使ってるのがへたって来てるし、新しいの買っちゃおうかなぁ、どうしようかなぁ……」
ハンディマッサージ器を手に、ブツブツ、と。
「肩凝り、ひどいんですか?」
「え? あ? いや、まぁ、そう、肩凝り、うん、肩凝るのよ、女の子は」
それは……ぱっつん子先輩だけじゃないですか?
とは、突っ込めず。
まぁ、色々、あるんだろうなぁ、と、納得しておく。
そんな感じで。
特に何を買う訳でもなく。
フロアをひとつひとつ、周って。
ウィンドウショッピング?
スポーツ用品店、薬屋さん、バラエティショップに百円ショップ。
靴屋さんに、あと、洋服系のショップも多い。
ランジェリーショップは、さすがに勘弁してもらった。
「ふぅ……少し早いケド、お昼、食べに行こう、か」
元のフロアまで戻ってくると、ちょうどいい感じの時間に。
「あ、はい」
フロア自体も、ちょうど食べ物屋さんの多いフロア。
「何か食べたいもの、ある?」
「えっと……そうですね……」
ちょうど、目の前に。
「これがいい?」
「あ」
じっと、見てたのに気付かれた?
「天丼、いいね。これにしようか?」
「あ、はい」
なんとなく。
イタリアンとか、パスタとか、そんな風なイメージもあるおさげ子先輩だけど。
天丼も。
ありと言えば、あり?
女子高生、二名様、天丼屋さん、ごあんなぁい。
「ごちそうさま、でした」
「ごちそうさまでした」
天丼、並。
とても美味しゅう、ございました。
「さて、と、次は駅の反対側、行ってみよう」
本来なら。
オトコのウチがリードして、案内するのが筋な気もしなくはないが。
ここは先輩後輩で、先輩にリードしてもらう感じの勢いで。
それもあるけど、今日の目的は。
おさげ子先輩の口調を学ぶこと。
意識して聞いてみてるけど、やっぱり。
丁寧だけど、女の子女の子した口調とは、ちょっと違っていて。
うん、ウチが真似る口調としては、一番、しっくりくる感じ、かな?
「あ、待って下さい、先輩っ」
今日は、まだ少し。
先輩と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます