第35話:おさげ子先輩と電車で、ごー



「ほら、行くよ」


「あ、はい」


 何故か。


 おさげ子先輩と、ふたりきり。


 休日の、繁華街。


 電車に乗って、数駅。


 数駅と言っても、二十分くらいかかるんだけど。


 この路線で一番栄えてる、町へ。



 何故か?



 前回の八時間目で、おさげ子先輩の口調を真似るのがよいのでは?


 と言う事になって。


 それならば、印象に残りやすいように、と。


 いつもと少し違う環境で、ふたりで過ごしてみるのがいいんじゃないか?


 って話に。



 で、次の休日が、今日。


 最寄りの駅で待ち合わせをして、乗り込んだ電車の中で。


 小声で、少し会話。



「ふたりきりとか、ちょっと緊張、します、ね……」

「そうね、わたしも男子とふたりなんて初めてだし」

「ウチもそうですよ……女子とふたりなんて」

「初めて同士?」

「言い方……」

「あはは……でも……不思議だなぁ……」


 車窓の外。


 遠くの景色を眺めるように、おさげ子先輩が、続ける。


「男子って、もっとこう、がーって感じでガンガン来るものだと思ってた」

「そりゃ、ヒトに因るでしょ?」

「うん、そうだね」


 お互い、顔を見ずに、車窓、車内の吊り広告、そんなものを見ながら。


 声だけで。


「園田氏、家が学校の真ん前なんて、通学が楽でホント、いいよね」

「まぁ、通学その為だけに選んだ高校でもありますし」

「わたしら……サクラもミリィも電車通学だから結構大変なんだよねぇ」

「三人、小学校から同じ、なんですって?」


 あ。


 ちなみに、今日、『しの女』の制服姿。


 一応、八時間目の延長、課外授業、ってコトで。


「幼稚園と言うか、産まれた時から、かな」

「そうなんです?」

「うん。三人の親が知り合い、と、と言うか、仲良しだったらしくて」

「へぇ……」


 幼馴染おさななじみ、ってヤツですね。


幼馴染おさななじみ、ってヤツですね」

「そうそう。腐れ縁、とも、言うかな?」

「あはは」


 笑う時には、口元を少し隠して。


 そんな仕草も、少し身に着けた。




 おさげ子先輩……中原ツグミ先輩。


 今日も、チャームポイントの胸元に垂らしたおさげは解かず。


 お元気娘の金髪子先輩……小坂ミリー先輩。


 お上品お嬢様のぱっつん子先輩……大里サクラ先輩。


 普通の女性のエリ先生……沢田エリ先生。


 さらに普通のおっとり母さん……園田沙彩さぁや


 ウチを取り巻く、五人の女性の中で。


 おさげ子先輩が、一番。


 女性らしくない、と言えば、そうかもしれないけど。


「まぁ、あの二人がちょっと変わってるからねぇ……わたしが抑え役と言うか?」

「傍観してるだけにも見えますけど?」

「そぉ?」


 なんて。


 話をしている内に。


 駅名を告げる、車内アナウンス。


「お? 着くね。行こ」

「はい」


 先輩に続いて、座席から立ち上がって。


 まだ揺れる車内を移動して、ドアの前へ。


 と、思ったら。


 電車が原則して、少し揺れたため、すこしぐらついてしまう。


「おっと」


 おさげ子先輩が、ウチを支えてくれて。


「大丈夫?」

「あ、はい、すみません」

「いえいえ」


 そうして、電車がホームに停車して。


 開く、ドア。


「ほら、行くよ」


「あ、はい」



 これって、でも……?




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