第13話:オレが女らしくなるために(いや、いらんけど)



 学校の先輩方のみならず。


 母ちゃんからもオレを『女らしく』させるだとかで。


 私服までも女物を用意しようとされている。


 夜だったこともあって、その場は母ちゃんからなんとか逃れたものの。


 次の休日に母ちゃんと私服の買い物って話にって話になってしまう罠。


 いや、最初に下着買った時みたく、ゴネてネット通販で済ませようとは思ったりしているが。



 そんな日々の中。


 またも『八時間目の授業』が始まる。



「それでは、園田く……園田さんを『可愛くする』方法について考えたいと思います。何か意見のある方は挙手を」


 幼顔のロリ先生が幼い声でのたまわれる。


 いや、もう、なんか、目的、変わってね?


「はい」

「では中原さん!」


 おさげ子先輩がこそっと挙げた手にロリ先生が抜け目なく反応。


「やっぱり女の子の……女性の、母性の象徴としての膨らみが必要だと思うわ」


「貴方がそれを言いますか?」


 すかさずぱっつん子先輩が突っ込みを入れる。


 うん、言いたい事はわかるぞ。


「そりゃ、サクラに比べたらナニがソレだけど、それでもミリィとか先生と比べたらそれなりにわよ、わたしだって」


 上体を反らして、部分を強調して主張する状態のおさげ子先輩。


 もちろん、比較に出されたふたりが黙っている訳もなく。


「ちょっ、ツグみん、何言ってるのよっ!」

「中原さん! 言っていい事と悪い事がありますよっ!」


 金髪子先輩とロリ先生が張り合って、おさげ子先輩に並んで上体を反らせる。


 てか、おさげ子先輩って、『ツグみん』なのか……中原ツグミ、かな?


 んで、金髪子先輩が『ミリィ』……あだ名なのか、本名なのか微妙だよな。金髪だし、片方の親が外人さんって可能性もあるけど。


 それよりも。


 上体を反らせてはいないぱっつん子先輩と並べて比較しても……。


「五十歩百歩」


 あぶねぇ、オレも同じこと言いかけたけど、先にぱっつん子先輩が言ってくれた。


「むっきーっ!」

「大里さんもっ! 後で個別指導しますよっ!」

「そんな事より」


 ぱっつん子先輩が他をスルーして続ける。


「やはり、女性の象徴と言えば髪ですわね。『女は髪の命』と言う言葉にもあります通り、先ずはその短い、短すぎる髪をどうにかなさいませんと」


 ぱっつん子先輩が自身の長い黒髪をかき上げながらおっしゃられますが。


 んが、しかし。


 『髪』と『女』が逆じゃね? って、突っ込みたいけど、突っ込んでいいのかな。


 他の面々は全く気付いてないっぽいから、ここで突っ込むのは野暮?


 空気読んでスルーしとくか……。


「伸ばすにしても、時間かかると思うけど?」


 一応、素で返してみる。


「ウィッグがありますわ。ウィッグを着けなさいまし」


 ウィッグ? あぁ、ようはカツラだよな?


「なんかムレそうでヤだなぁ、カツラは……」


「そうよそうよ。やっぱり見た目よりも内面! 女の子らしい仕草とかを覚えた方が女っぽくなれると思うな、ウチは」


 反り返りから直立に復帰した金髪子先輩から意外な発言。


 即座にぱっつん子お母さんからの矢のような突っ込み。


「貴方がそれをおっしゃいますか? やんちゃ娘」


「元気のいい女の子の方が可愛いに決まってるモンっ!」


「やかましくて落ち着きがないだけでしょう?」


「ちがうもんちがうもん」


 言い合う金髪子先輩とぱっつん子先輩。


 うん、女の子らしいって意味ならぱっつん子先輩やおさげ子先輩の方が、だよな。


 金髪子先輩はやんちゃなク〇ガキ風味が強い。


「そう言う意味なら……」


 おっと、そこにロリ先生が幼声で割り込み。


「やっぱり言葉遣い、からかなぁ」


 いや、まぁ、なんだ、これ。


 全部却下してぇええええっ。


 んが、しかし。


 結局。


 順番をどうするか、って議論に変わり。


 全部やるのは全部やる、らしい。



 とほほ。






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