第10話:ブラの中にあるもの(実は何もない)



 おさげ子先輩にパンツを見られてしまい。


 女性用の下着を着けている事を悟られ。


 パンツからの連想で。


「ブラも着けてるって……コト?」


「まぁ……校則だし、な……」


 なんか、パンツよりブラの方が恥ずかしい気になるのは何故だろう?


 パンツ自体は男物もあるし、構造が違うとは言え男物のビキニパンツとか、あるしな。


 でも、ブラジャーは。


 そもそも着ける必要性がほぼ皆無。


 あの校則さえ無ければ、着ける意味は全く、無い。


 はず。


 まだ着け初めて浅い日々。


 正直、胸元と言うか、脇と言うか背中と言うか。


 いわんや、ぐるりと上胴を締め付ける慣れない感触。


 違和感しか、無い。


 そもそも着ける習慣などなかったため、着け忘れそうになることもしばしば。


 まぁ、着け忘れたところで、校則違反になる以外の不都合は、無いのだけど。


「どんなブラ着けてるの?」


 おさげ子先輩が追い撃ちのように訊ねて来る。


 って言うか、セクハラおやじだぞ、その聞き方。


「だから、校則の通り『白の単純シンプル』なやつ」


「うわぁ……ランジェリーショップに買いに行ったんだ?」


「んな訳あるか! 通販だよ、通販っ!」


「ふむ……通販でも買えるのね……フィッティングとか……は、する必要も無いのか……」


 おさげ子先輩が何か思案する脇で聞いていた金髪子先輩、ぱっつん子先輩、それにロリ先生が。


「な、なんだよ……」


 遠巻きとは言え、じーっと見られるとさすがに恥ずかしいぞ?


「み、見るな……」


 腕を身体の前で交差させて、自分を抱くように、隠す。


「んー、パットは入れてないの?」


 さらにぱっつん子先輩。


「パット?」


「うん、ブラの中に、何か入れてる?」


「いや? 特には何も?」


 もともと、入る物も無いし。


「なるほど……違和感の正体は、それか」


 ぱっつん子先輩もオレと同じように身体の前で腕を組む。


「わたしと同じくらいの背格好なのにまっ平なのが違和感あるよね、やっぱり……」


 あぁ……まぁ、確かに。


 そうやって腕を組むと、違いがあからさまだな。


 ちなみに、ぱっつん子先輩はさらに背の高さと比例してるっぽいし。


 金髪子先輩とロリ先生も背の高さに比例して。


 ……。


「んー、もうちょっとあった方が、それっぽくなるんじゃないかなぁ……」


「あー、そうか、そうだ!」


 そのロリ先生が何か思いついたのか、唐突に、叫ぶ。


「こうしましょう」


 何が?


「二年生の三人が男子に慣れるようになるために、園田くんを女らしくするお手伝いをしましょう!」


 え?


「髪型とかお化粧とかも含めて、仕草とかも、もっともっと女の子らしく、ね?」



 ええっ?



 何それ?



 やだぁ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る