第2話:呑むか、呑まざるか
『元』女子校の『しの女』。東雲女子高等学校に入学して数日。
玄関から五秒で通学できる立地がめちゃくちゃリッチでハッピー。
女子校だったから入学はあきらめてたんだけど、丁度共学化されたため。
もちろん、受験。
そして、合格。
したのはよかったが。
そもそも、あまり共学化を宣伝していなかったらしく、男子の出願が微小。
さらに、試験当日の大雪で受験者数自体が減少。
大雪への対応については後日試験等も含めてフォローはされたらしいが、そもそも試験会場である学舎に向かう途中ですっ転んで病院送りになった子も居るとかで。
そもそもこの学校、界隈でもそれなりの進学校で偏差値も高く。
勉強マニアとまでは言わねど、中学では部活にも入っておらず、あまり友達と遊んだりもせず、勉強はそこそこ出来たオレは。
オレだけが。
男子で合格。
合格通知と共に、学舎への出頭(?)の連絡が直接やって来たのは、春まだ浅い、まだまだ寒風吹きすさぶ、三月も初めの頃……。
母ちゃんとふたり、目の前の『しの女』の学舎を訪問。
通された応接室で、理事長とやらと校長とやらと、事務員やら教員やらに取り囲まれて。
合格おめでとう、からの、入学するかどうかの本気度を訊かれることに。
そこで示されたのは、『しの女』の校則。それが書かれた生徒手帳。
生徒手帳の文字だと小さくて読みにくいだろう、と、大きくプリントされた用紙の束。
男子用の制服は用意されておらず、その校則に従って。
冬服でも真っ白なセーラー服。胸元には『東雲女子』のロゴマーク。
毎日のように家の前で見ている制服だから、ものすごく馴染みはある。
「え……下着も、ですか……?」
母ちゃんが、真面目にプリントされた校則を読み進め、気付く。
オレも流し読みして目に止まったその部分を見ると。
『下着は白または淡い色の単純なショーツとブラジャー、キャミソール等のインナーを着用する事』
え……?
そんなところまで、校則で限定されてるの?
ってゆーか、ショーツとブラ、キャミって……。
トランクスとTシャツじゃだめなの?
え?
え?
てな感じで。
入学をあきらめるか、この校則を呑むか。
迫られた訳なんだけど、さ。
『滑り止め』に受験した公立高校は……遠いんだよなぁ……。
駅までの坂道。
行きは下りでいいんだけど、帰りの登りは地獄。
駅から電車を乗り継いで、駅数はそんなに多くは無いと言え。
駅から学校までがまた坂道と来てる。
直線的に学校まで歩くか、自転車って手も無くはないが。
雨とか、それこそ、この間の雪みたいな日には……。
いずれにせよ。
『玄関開けたら五秒で到着』の、この『しの女』と比べてしまうと。
「うーーーーーーーーーーん……」
はい、かなり、悩みました。
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