赤目のウサギ

菅原 高知

赤目のウサギ

 あるところにウサギがいました。


 小さく 白い 赤い眼をしたウサギでした。


 ウサギはいつも一人で泣いていました。


 ある日、ウサギのところにヒトの子がやって来ました。


 そして聞きました。


「どうして泣いているの?」


 ウサギが答えました。


『私はみんなと違うから』


 そう言ってまた泣くのです。


「どこが違うの?」


 ヒトの子が不思議そうに聞きました。


『お父さんもお母さんも、兄弟姉妹たちもみんな黒や茶色の毛なのに私だっけ真っ白なの』


 赤い目から涙がこぼれます。


「そんなの全然気にすることないよ。ボクもお父さんは肌の色が白くて、お母さんは黒。だけど私の肌の色は黄色みがかってる――でも、変じゃないでしょ?」


 そう言って、人の子はクルッと回って見せました。 

 なるほど、確かにヒトの子は変ではありませんでした。


『お父さんやお母さん、兄弟姉妹たちはみんな目の色が黒いのに私だけ赤いの』


 ウサギはやっぱり泣き続けます。


「そんなの全然気にすることないよ。ボクもお父さんはの目は青くて、お母さんは黒。だけどボクの目は茶色――でも、変じゃないでしょ?」


 そう言って、人の子はその大きな目をパチクリとさせ、ウサギを見つめました。

 なるほど、確かにヒトの子の目はキレイでキラキラと輝いていました。


『私は女の子なのに、お家で弟妹の面倒を見るより、お外で走り回っている方が好きなの』


 ウサギは申し訳無さそうに俯き、やはり泣きました。


「奇遇だね、ボクもだよ。ボクも体は女の子だけど、心は男の子なんだ」


 そう言って、ヒトの子は嬉しそうに飛び跳ねて笑いました。

 

『どうしてみんなと違うのに悲しくないの』


 ウサギは真っ赤に泣きはらした目でヒトの子を見つめました。


「だってボクはボクだもん。いくら他の人になりたいと思っても無理だから。ボクはボクのなりたいとボクになるんだ。自分がしたい事だから悲しくないよ」


 そう言ってヒトの子は笑うのでした。


『わ、私もアナタみたいに成れるかな』


 ヒトの子の言葉に驚き、涙を止めてウザギが聞きました。


「ソレは分からないよ。だって僕は君じゃないから。君がどうなるかは君しか決められないんだよ。その赤目をただの泣き腫らした目にするのか、キラキラ輝く宝石にするのかも君次第さ」


 そう言うとヒトの子が手を差し伸べてきました。


「でも、一人じゃ不安なのも分かるよ。だから僕と友達になろうよ。僕は君が大好きさ」


 ウザギの目からまた涙が溢れ出しました。

 

 でも、その涙はそれまでのものとは違います。涙に濡れた赤目が陽の光を浴びてキラキラと輝きます。


『ありがとう』


 こうして、ウサギは本当に自分と向き合う勇気を手に入れました。



              FINE.


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赤目のウサギ 菅原 高知 @inging20230930

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