第23話
まあ、なんだ。一言でいえば男ばれした。彼女は多くは言わず、ただそこに立ちすくんでいる。俺もなんて言ったらいいのか分からなかったが、事情は説明したほうがいいだろう。
「ミラ……、隠してて悪い。俺は男だ」
「そ、そうですよね……」
彼女は苦笑いを浮かべた。そこからしばらくの沈黙の後、その沈黙を破ったのは彼女に努めているメイドだった。俺たちが個室に二人でいる。それも男のほうは半裸の状態で。設定上、俺たちは付き合ってると来たら、盛大な勘違いが生まれるというのは言うまでもないだろう。
「お、お二人とも。そういうことをするなら、ドアを閉めたほうがよろしいかもしれません」
そういってメイドは顔を赤くした。その言葉を聞いてだろうか、ミラはつられるように顔を紅潮させた。俺が慌てて否定に入ろうとすると、ミラがほぼ全裸の俺の手を取る。そしてもう一方の手でドアのぶを握った。
「ごめんね、メイドさん。今度からはドアを閉めます。じゃあ私たちはこれで」
それだけ言ってミラはドアを閉める。もしここで俺がこの状況を否定していたら、彼氏と彼女という設定が丸崩れになってしまうのか。
なんて一人で彼女の行動の考察にひたっていると、ミラは少し恥ずかしながらドアの向こうにいるメイドには聞こえない声で呟く。
「ふ、服……はやく着て」
「すみません」
その声に従うようにスーツに袖を通す。完全に着替え終わったところでドアの向こうから先程のメイドの人の声が聞こえる。
「お楽しみのところ申し訳ないのですが、お父様方の準備が終わったとの連絡が入ったので向かう準備をしてください」
それだけ言うとメイドは足音を立てて、俺たちのところから離れた。その音に弾かれるように、俺の方に振り返ったミラは若干の涙目になりながら、俺の腕に手を回した。
「アリアン……私はあなたが男の子だとはおもっていませんでした」
「本当にすまない」
「私はアリアンのことが……と、友達としては!好きだったんです。恋愛感情などなかったはずです」
彼女はひとつ咳払いをした。そして俺の目を見て恥じらいながら言うのだった。
「で、でも。男の子だと気づいてしまった今はちょっとだけドキドキしてしまいます」
「え、えっ!?」
俺は驚いて驚嘆の言葉だけを漏らす。何を言えばいいのか、俺が迷っている隙に彼女が言葉を続ける。
「ごめんなさい。パーティーのメンバーをこんな目で見るのはあれなんですけど。でもこれは。このドキドキは多分、女の子だと思っていた人が男の子だとわかったからだと思っています」
「じゃあ、この手は?」
「これは彼女としての演技です」
そう言って彼女はもう一度、自身の胸の方に俺の手を押し付けた。その柔らかい感触に俺はキモイこと間違いないのだが、肩唾を飲み込む。
「じゃあ、ミラの胸の振動は……」
「誤作動です」
そう言って彼女は俺の方に笑いかけた。
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