第22話

「ぼ、僕が男のふりを?」


俺はあっけにとられた。ミラは大きく首を縦に振ると、事情を説明し始めた。


「失礼なことは承知なんです。でも男のふりをするのは、アリアンしかいないと思いまして」


そりゃ、そうだろう。男なんだから。いつもの俺に戻るだけだ。


「……でもなんで、男装なんか」


俺が誰もが思う疑問を言ってみると、彼女は押し黙った。そして意を決したのか、俺の目を見た。いつもの優しい彼女ではない強い目線だった。そして彼女は深刻そうなことを話し始めた。


「パーティーのみんなの人には秘密にしてほしいんですけど……」

「秘密にしてって言われたことは言わないよ」

「私はもう、ダクズブルク家の人間ではなくなります」


俺は何も言われても、彼女を慰める準備をしていたが俺は言葉が出なかった。もうってことは彼女はダクズブルクの人だったが、縁を切られたということだ。何かあったのだろうか?


「私は本家の長女でした。しかし、私は商業の道に進まず、冒険者という職業を選びました。そして、今回の命の危機が迫ったということを聞いたらしいんです」

「は、はあ。それでなんで僕は、男装をすることになるんだ?」

「私から冒険者の職を取り上げようと無理やりお見合いを設定したんです」


お見合いとは政略結婚や、出会いがない人が行うものと認識している。多少の認識違いはあるだろうが、大幅なずれはないはずだ。ということは後者はまずないとして、前者にしては早すぎる。


そんなことを思っていた時に彼女の綺麗な服に目が言った。冒険をするというより、どちらかというと舞踏館に行くような。それに気づいたとき彼女が次に何を言うのかは大体、予想できた。


「それで私が用意した言い訳が彼氏がいるといったんですよ。で、見事、アリアンが彼氏として選ばれました」

「えへへ、ですよねぇ~~」

「あはは。そうなんですよー」


少しの間、会話なく笑い声だけが続いたが、そんなこともしてられない。


「いまからお見合い相手と会います。私の」

「わ、分かったから衣装は変えないと。とりあえず、どこかで着替えないと」

「私の部屋で着替えてください。スーツ用意してますから」


そんな風に無理やり、彼女の部屋に連れてこられた。彼女の部屋はかわいいといわれているのはなくて、歴代の有名冒険者の写真や魔法書ばかりだった。女の子の部屋だといわれなかったら、分からない。


「頼んでいる立場で悪いんですが、早く着替えてください」


そんなことを言って、彼女はベッドに寝転んで俺の着替えを待った。着替えなんて見られたら、すぐに男だってばれてしまう。


「ちょっと恥ずかしいな。胸ちっさいし」


俺はメアに謝りながら、この言葉をつぶやいた。女の子同士でも着替えを見られるのは恥ずかしいと聞いたことがある。


「そ、そうですか。じゃあ、外で持ってますからね」

「うん」


彼女が出て言った瞬間に食い気味に着替え始めた。スーツを着るなんて初めてだ。というかこんな場所に顔を出したこともないし。早く着替えないと、ミラが心配して入ってくるかもしれない。そんなことを思って、まずは全部の服を脱いだ。


「下着まで用意してくれているのか?まあ、お見合いってそんなところまで見せるのか?仕方ない」


俺がパンツを脱いだ時、扉が開いた。飛び込んできたのはミラだった。なにかを言いながら入ってきた。もちろん俺は全裸である。


「ごめんなさい。メイドがいたずらで弟のパンツを入れたらしく」


彼女は何かを言おうとしていたらしかったが、途中で黙り込んだ。そして俺の体をじっくりと見て呟いた。


「そ、それ、要りますよね、あはは…」


彼女は自分の赤く火照った顔を両手で覆ってその間からチラチラ見ている。終わったかもしれん。


◆◆

『乙女ゲームの主要キャラなのに人気ランキング低い奴に転生したけどそれっぽいセリフ言ってるだけでなんかモテる話』

もよかったら見てくださいねー。

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