第18話

土下座した俺をよそに持っていたコーヒーを机に置いてソファに腰かけた。そして自分の横を数回叩いて俺を横に座るように指示した。俺はその指示通り、横に座った土下座の勢いのまま座ったために少しだけケーラにもたれかかるようになったのだが、

すぐに体を離された。幼馴染なのにいまだパーソナルスペースへの侵入を許されていないなんて。


まあ、前日にあんなことがあったんだから仕方ないか。通称、ケーラ少女漫画愛読事件。俺的には美味しい事件だが、彼女からしたらそうでもないだろう。


「で、やっぱり私を誘うことにしたんですね。いいんですけどね。一つ気になることがあるとするならば戦闘面は活躍できませんよ。だってあなたたち全員、戦闘のエキスパートじゃないですか。あと、『ですます』キャラはミラさんと被ってますし」

「キャラかぶっているって……。それと戦闘面だけどさ、ケーラなら弓矢とかで何とかできないかな?俺たちが全力でサポートするしさ」


俺がそういうと、少し黙り込んでから、先ほど取った俺との距離を詰めた。祖いs手おれの顔を下からのぞき込むようにして質問を投げかけた。


「私がピンチの時、一番に私のもとに駆け寄ってきてくれますか?」

「それは仲間だしな?俺はかっこいい騎士さんなんだぜ?」


少し冗談めかして返答してしまう。そんな俺の回答にかまわず彼女は俺の目をまっすぐと見て、俺の目を逃がさないとてもきれいな瞳でもう一度、俺に質問した。


「仲間としてではなく……一個人として、ケーラを守ってくれますか?」

「それはな……」

「す、すみません。自分勝手でしたね。反省します」


そういって彼女は少し悲しそうな顔をしてソファから立ち上がろうとした。


違うな、俺は何か勘違いをしていたのかもしれない。俺は自分の立ち位置に奢りすぎている。俺が言ったらなんでも引き受けてくれるケーラのやさしさに漬け込んでいるだけなんだって。


じゃあ、俺がここでとるべき行動は必然と決まってくるんじゃないのか?俺は立ち上がろうとしたケーラの手を取った。


「待ってくれ、ケーラ」

「ん?まだ何かありましたか。私は少し頭を冷やそうとしているんですけど」


彼女は今すぐここを立ち去りたいといっているようだった。俺とは目を合わしてくれなかった。


「俺は小さいときみたいにケーラのためならさ、体を投げ出すよ。俺はケーラの騎士だからな。だから俺と一緒に戦ってくれないかな?」


俺がそういうと、ケーラは口をモゴモゴさせていた。まだ答えを決めかねているようで、俺が追撃をかけようとして瞬間に彼女は話したので被るような形になった。


「わかっ「俺にはケーラが必要だ。俺のそばにいてほしいんだ」


思わず手を取ってしまった。すぐに手を離されるとおもったが、ケーラは軽く握り返すときっこりと笑って少し涙を含んだ声でつぶやく。


「……私はご主人様についてきますよ。あの時、身を張って守ってくれたあの時から気持ちは変わっていません。だから今までアリアンについてきたんですよ?これからもよろしくお願いしますね」


それだけ言うと、彼女は自室へと帰っていった。その足取りは今にも走り出してしまいそうな軽い足取りだった。俺はさっきまで握られていた右手の感触を思い出すようにもう一度握ってみたりした。


「何だ、今のは……。可愛すぎないか」


リビングに一人残された思春期の男の子は一人悶々としていた。


しかし、一方の思春期の女の子も悶々としていたのだった。ピンクの色がない、一目見ただけでは女の子の部屋とは思えない質素なところに唯一存在するクマのぬいぐるみを抱いてベットにうずくまっていた。


「待って、まて。攻めすぎちゃったかもぉ……」


そういって少しだけクマを抱いている強さを上げた。そしてそれに顔を埋めるとつぶやいた。そいて足をバタバタさせている。


「仕方ないよね。鈍感なんだから」


そう吐き捨てるとお風呂のために着替えを用意し始めた。


◆◆

星が欲しい。










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