第7話
しっかりとエリアを家まで送り届けると、俺は自分の家へと帰った。荷物もなかった俺はスキップでもしそうなくらい、足が軽かった。
それはあの人に会えるから。
俺は自分の家に帰って、即シャワーに入る。これが日課になっている。が、その前に……。俺が玄関のドアを開けると待っていました、と言わんばかりに、メイドさんが顔を出す。
俺と同じ黒い髪に、黒い目。白黒のメイド服が似合うスレンダーな美人さん。俺よりも一つ年上。俺の家に使えるメイドのケーラである。
「おかえりなさいませ、アリアン様」
「あーただいま、ケーラ。今日もお迎えしてくれて、もしかして俺のお嫁さん?」
「違います。メイドです」
俺が丁重に二人の鉄板のネタを振るが、綺麗にかわされてしまった。彼女は真顔を崩すことはない。あんまり笑ったところは見たことがない。ここ最近は……。
「今日も可愛いですね、アリアン様」
「俺はかっこいいの方が嬉しいんだぞ」
彼女は俺が男だと知る数少ない人の一人。今では有名になった、俺たちが魔物に襲われて、ほとんどの村人が死亡した対魔物最悪事件の一つ『カルラ村消滅事件』で生き残った者の一人である。
「あんなことがあってどうなることかと思いましたが今では人気アイドル♡アリアンちゃんですもんね」
「たまったもんじゃない。あれだぞ、俺の事を推しだとかいう奴がいるだぞ」
「そりゃ、アリアン様は可愛いですから、当然です。私が男なら惚れてしまいます」
そんなことを真顔で言うんだから、この人は卑怯である。首元で整えられた髪はボーイッシュで、かっこいいという部類に入る。
「とりあえずお風呂に入るわ、メイク落としたいし」
「あ、あれ待ってました?」
「なんだよ、あれって」
そう言うと、くるりとその場でターンをすると、メイドのスカートをふわりとさせて少しだけ目を光らせて言うのだった。
「ご飯にしますか?お風呂にしますか?それともメ・イ・ド?」
指でハートを作るケーラ。な、何!?俺を誘ってるのか!これはアリアン、来て。のサインなのかぁ!ここで行かなきゃ男が腐るだろ!
「じゃあ!メイドで」
「はい。じゃあお仕事を割り振りますね、まずはフローリングを綺麗にしてもらうのと……」
そう言って、ほうきを手に渡してくるメイドさん。その顔には張り付いた笑顔があった。これはメイドとしてのスマイル。
「お願いしますね」
「はめやがったな!クソメイド……」
「これがハニートラップってやつです。ほら、早く手を動かす」
普通に風呂にしとけば良かったと後悔するが、まぁメイドに奉仕するのも悪くないだろう。
「ふふふ~ん」
可愛いメイドの鼻歌も聞くことも出来たしな。久しぶりに幼なじみと戯れるとしよう。
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