第6話

エリアが泣き止むまで、背中をさすってあげた。時々、エリアの相談に乗ってあげよう、そう思った。別に下心があるわけじゃないからな!決して女の子の失恋に漬け込む悪い奴じゃないんだからな。うん。


「少し、落ち着いた。ありがとう、アリアン」

「また、何かあったら僕に相談してね。背負い込むのは良くないよ」

「了解した。じゃあこれからもよろしく」

「……ん。よろしくお願いします」


そう言って手を取った。剣を握っているからマメだらけの戦士の手をしていた。これでこそ相棒である。と、俺が感心していると頬を少し赤くして恥ずかしそうにエリアが言う。


「そうだ!他のパーティの子達にはまだ言っていないんだが、レベルが上がって私の加護の強者の風格バイギルドが強くなったんだ」


そう言って何かを求めるように俺の事を上目遣いで見る。そして、ちょこんと俺の近くに座り直した。


「……んん? 何?頭なんか差し出して。僕に何を求めてる?」


俺がそう聞くと彼女は目をそらした。そして恥ずかしそうに頬をかく。


実際、恥ずかしいのだろう。タイミングは夜。月明かりの下。道端のベンチで二人きり。目の前のエリアが三倍増しでかわいく映る。追撃するように甘えたような声で、いつものエリアじゃ想像することができない態度で。


「メアには頭を撫でてあげてたのに私はしてくれないのか?」

「へぇ!?して欲しいの?」

「ま、まぁ……っ…///」


エリアは恥ずかしそうにしながらも、肯定の言葉を漏らす。これは仕方ない。不可抗力だ。俺は遠慮がちにエリアの頭に手を置く。


エリアの体温が手から伝わる。当の本人はニタニタと言う言葉が似合うだらしない顔をしていた。やはりリーダーとはいえ人間なのだ。甘えたくなる時だってある。その相手が俺だったというなら、信用されている、ということもあるが単純にうれしい。


頭をポンポンと軽く撫でてから、手を離す。これ以上してると、まともな判断は下せなくなる。


「ありがとう。これで明日からも頑張れそうだ」


エリアは俺の手をそのまま自分の頬までもっていった末に離した。俺から目をそらしえて、誰もいない道のほうを眺めた。



「癒されたなら僕は良かったよ。そろそろ帰ろうか。もう夜も遅いし、女の子二人じゃ危ないし」

「そうだなっ!まぁ、そこら辺の男には100パーセント負けないけど、アハハ」


そう言って、エリアは笑った。女の子、二人だからなー!強調しようかと思ったが変に意識されても困るのでやめておくことにした。


俺たちは街の灯りが綺麗に光る道をゆっくりと歩いた。人が多くなってきて、住宅街へと入ったことがわかる。週末の夜ということでみんな少しだけ浮かれているようだ。そして、エリアがアリアンに聞こえないくらいの声で呟いた。


「……君が男の子だったら、私の初恋を受け取ってくれるんだろうか?」


何かを言ったような気がしたが、エリアは何も言ってないと言うので、気のせいだろう。俺のほうを少し見てからエリアは満月をみて、かすかに笑った。


本当にきれいな満月だ。


一方、ミラとメアの方はと言うと……。月なんて見る余裕はなかった模様で。


「やばいでふ。気持ち悪いぃい……」

「え、待って。ここで吐かないでよね?ねぇ、聞いてる!?」

「あ、これはヤバいやつです」

「ねぇぇぇぇぇえええー!?」


こっちはこっちで大変だったようです。


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