第4話

百合に巻き込まれたハグ事件は何とか耐えきった……。いい匂いだし、柔らかいし、横にメアがいないとどうなっていたことか(失礼)。そんな失礼な視線を感じ取ったのか、メアと目が合った気がする。それは暗い場所で魔物とあったような。


もうこの話はやめよう。命がなくなりかねん。


みんな、ご飯も終盤に差し掛かってきて、みんな少しずつ満足してきて口数が少なくなってきた。もくもくとご飯を食べ、黙っているが決して気まずくない。この雰囲気が好きなのだ。


俺が落ち着くようにオレンジジュースを飲んでいると自分のご飯を食べきって、共同のサラダにフォークでさした。よく食べるな。俺よりも食べているんじゃないか?


俺は驚いた顔を作ってエリアのほうを向いたが、彼女は何も感じとってはいなかったらしい。そもそも、女の子にいっぱい食べるノリはあまりよくないらしい。


俺と目が合ったと同時に思い出したように、意思を感じ取ったぞとにっこり笑ったエリスがきれいな白い人差し指を立てて話し始めた。


「あ、そうだ!純白鳩の本拠地を作るって話はどうなったの?」


うわぁ……。そんな話があった。落ち着いた雰囲気にぼんやりしていた頭を無理やり起動させる。真剣に話に向き合わないと、命が危うい。いっしょに一緒に住むなんてなったら、男とバレる可能性が飛躍的に上がる。それだけは避けないといけない。


そんなふうに思っていると、ミラがエリスのことを真似するように人差し指を立ててニコニコしながら言った。真似されていると気づいたのか、エリアが不服そうな顔を浮かべていた。


「いい所がありましたよ。お父さんが『みんなの家くらい、お父さんが買ってあげよう』なんて言ってくれまして」


ルンルンに話すミラの頭をぐりぐりとしてやりたい。許せない。でもみんなのことを思ってしてくれてるんだ。仕方ない。彼女のやさしさを否定することはできない。


そんなことを思っていると、メアがパスタをクルクルと巻きながら、最高の俺への援護をする。


「でも……それはさすがにミラのお父さんに迷惑をかけすぎというか」

「僕もメアと同じだよ。お父さんに申し訳ないとおもう」


すかさず、俺も同意する。これで却下という方に意見が寄れば俺の勝利だ!お人好しのエリアなら確実に俺らの味方をするはずだ。多数決なら勝ち。


AHAHAHAHA!


おっと、汚い笑いが出てしまった。これはいけない、いけない。僕はアリアンちゃん♡


「そうだと思って、半分は私たちで払おうということになりました。結構な額ですし、これからの努力次第で返せる額ですが」


そう言ってニコッと笑うミラ。なんでそんなに優しいんだよ。よぉーし、もういってもいいよね!ぐりぐりしちゃってもいいよねぇ!?


「ひ、ひぇっ!ち、ちなみにどれくらいの値段なの?」


おい、リーダー(エリア)。何、逃げ腰になってんだ。エリアがしっかりしてくれないと決まるものも決まらないだろう。札束で殴れば、よわよわになりそうだな。


とはいえ、何ポンドくらいだろうかと予想していると、思ったより斜め上の額だった。


「えっと……金貨100枚かな?」

「ひゃ、きゅ、まぁ、いぃ~。。。」


力が抜けていくように倒れるエリア。空いた口が塞がらないメア。そしてため息をつくしかできない俺。


「ミラちゃん待ってね、お姉さんがお金の価値を教えてあげるね。金貨100枚は魔王軍の幹部を倒すぐらいしないと手に入らない額だよ?」

「さすがにそんな借金は負えません……」


エリアとメアが口を揃えて却下を推す。ミラはそうなんですか、とあまり驚いてない様子。これだから貴族はと、またため息をつく。


「僕はあんまり分かんないけど利子とかもやばくなるんじゃない?」

「あー、それはダクズブルク家が負担しますので無利息ですよ」


そう言ってポンっと手を叩く、ミラ。そしてニヤリと笑うと、商売で貴族にまで成り上がったダクズブルク家の血筋の見せるかのように商談するのだった。


「まぁエースなんて言っていたメアさんも、私達を取り仕切るリーダーのエリアもその程度の覚悟ってことですか」


そう挑発的に言う、ミラ。さっきまで目に焦点があっていなかったエリアも生き返る。ヤバい、これは早く止めないとまんまと乗せられてしまう。


「このパーティなら、魔王軍幹部位は倒せると思っていたのは私だけと言うことですか、」


そう言って呆れるようにため息をついたミラ。俺が己の小さい頭をフル回転してもいい打開方法は思いつかず。


「そんなわけあるかぁっ!」

「私はリーダーとして魔王軍の幹部くらい倒してみせるし!」


まんまと引っかかった馬鹿な小娘達はミラの手のひらの上で転がされている。


「じゃあ買えますよね?」

「当たり前!」

「当然です」


あーあ。さっきまで頭を抱えていたエリアも、

のせられてしまった。今度は俺が頭を抱える番になるとは……。ここぞとばかりにミラが話を俺に振る。


「アリアンも出来ると思いますよね?」

「は、はぁーい……」


俺は悔し涙を我慢しながら、返事をした。もっと賢くならないといけない。この馬鹿な小娘達のためにも……。


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