第3話

俺たちは行きつけの居酒屋さんに行くことにした。駆け出しの頃から通い続けていて、店主とも仲良しである。


とりあえず生なんて言うのは、美少女達が集まるパーティで起こる訳もなく、俺も含めて皆、20歳になっていないため飲酒は禁じられている。


俺たちはオレンジジュースをジョッキに入れてもらい、雰囲気だけを出す。そしてパーティのリーダーであるエリアが掛け声をかける。


「じゃあ、純白鳩、シルバーランクに昇格おめでとうを祝して乾杯ー!」

「「「おめでとっー!!」」」


パーティのランクがシルバーに昇格した。当然といえば当然か。この国でも上位の冒険者が組んで作られたのだから。パーティが出来て日が浅いためにまだシルバーというわけだ。


「いやぁ、ついに私の魔法の力が世に知れ渡っていく。この私が!パーティのエースだから」

「いやぁ、シルバーに昇格できたのは僕の斬撃のおかげでもあるけどね。結局トドメを刺したのは僕だし」


メアが無茶苦茶なことを言っていたので乗ってやると、茶髪のミラが口を尖らせて言った。


「まぁ、私のバフ魔法がなかったらトドメもさせませんでした。ていうことで私が影のエースですね」

「ミラまで私のエースの座を……。私は魔法少女属性なんだぞ!強いんだぞ!」

「私だって魔法使います」


ミラとメアが言い争いを始める。お酒は入ってないはずなのに……。まぁ、いつもの事だから仕方ないか。


「「ねぇ、エリア?どっちがエースだと思う?」」


この言い合いの火種が飛んできたエリア。俺の方を見て助けを乞う目でこっちも見てきたが、助けてやらない。もっと可愛いめで見ないと俺は動かないぞ。


「ここで私に話を振るかっ!そ、それはメアもパーティに欠かせないし、ミラも欠かせない。どっちも凄い。あぁ、もうっ。ほら、褒めてやろう!」


そういうとエリアは二人の元に寄っていき、ぎゅっと抱きしめた。


「あつぐるじぃでぇす……!エリア」

「なんというか、何、この柔らかさの暴力っ!?」


悶えるミラと、怒っているメア。そして幸せそうなエリアとなんとバランスのとれたパーティなことか。

そんな姿を見ていると、冒険者達がてぇてぇ、と言っていた意味が分かる。


これは眼福、眼福……。


俺が観客のつもりで眺めていると一斉に3人が振り返って、俺に何かを訴えかけている。そしてメアが口を開く。


「ほら、早く来なさいよ、アリアンも」

「僕は遠慮しとくよ、あはは……」


俺は頬をかきながら、一歩引いて見る姿勢を保とうとする。さすがにこれに混ざるとなると、禁欲が厳しくなる。なのに……!


「アリアンもだっ!大好きだぞぉー!」


エリアは俺までを巻き込んだ。メアとミラの間に入るという最悪な展開。女の子のいい匂いするし、ヤバい。意識飛びそぉ……。


そんな俺たちを他所に、冒険者たちは俺たちを話題にしていた。いかにも駆け出しの若者二人が俺たちを眺めて言う。


「なんだよ!あの尊いパーティは!お姉さんのエリアちゃんに!ツンデレ白髪のメラちゃん」

「貴族という身分でありながら庶民肌のミラちゃん。」


そんな若者二人の会話に、ガチムチおっさんが続く。


「そして!俺の推しのアリアンたん。クールでボクっ娘なんて反則だろ……」

「「それなぁ……」」


こうして冒険者たちは憧れを持つのだった





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