第46話_心配

病院の待合室は静かで、落ち着いた雰囲気が漂っていた。

その中で、村田は本を開き、読みふけっていた。

周囲の人々はそれぞれに思い思いに時間を過ごしており、

待合室は静寂に包まれていた。


「すまん、トイレ行ってくる。すぐ戻ってくるからここでおとなしくしてるんだぞ」

と村田がライトに告げると、


ライトは顔を上げて、

「う〇こするの~?」

と大声で尋ねた。

その声は待合室に響き渡り、周囲の人々の視線が二人に集中した。


村田は驚きと恥ずかしさで顔を赤くしながら、慌ててライトの口を手でふさいだ。

「いいから黙って待ってろ..」

と、彼は怒りながら小声で言った。


「冗談だったのにー」

とライトがふくれっ面で言うと、

先ほどの女性看護師がライトのそばに静かに近づいてきた。


「こんにちは。さっきは痛くなかった?」

看護師が優しく尋ねると、ライトは明るく頷き、彼女の気遣いに心を開いた。


「あ、さっきの。うん、全然痛くなかったよ!」

と、ライトは元気よく答えた。

その声には、看護師への信頼と感謝が込められていた。


看護師はライトの隣にゆっくりと腰を下ろし、

「よかった。怖い思いをさせてたらどうしようかと..」

と、彼女の声には本当に心配していた様子がにじみ出ていた。


「ねぇ、ライト君はこの街に来るの初めてでしょ?」

と彼女が尋ねると、ライトは少し驚きつつも

「どうしてわかったの?」

と好奇心を持って返した。


「私この街の人の顔は大体覚えてるんだ」

と看護師は微笑みながら答え、ライトはその言葉にさらに驚いた。

彼女の地元への愛着と記憶力に感心した。


「今は病院の向かいの宿に泊まってるのかな?」

と看護師がさりげなく尋ねると、

ライトは無邪気にも自分たちの泊まっている宿の詳細を話してしまった。

彼女の親しみやすさに、ライトは疑うことなく心を開いていた。


「ありがとう、今度遊びに行ってもいい?」

と看護師が言うと、ライトは何の疑念も持たずに快くうなずいた。

彼の心には、新しい友達ができた喜びが満ち溢れていた。


「検査の結果が出るまでもう少し待っててね」

看護師はそう言い残すと、ライトの元を去っていった。


「ただいま。ん、さっきの看護師..何話してたんだ?」

とトイレから戻ってきた村田が尋ねると、

ライトは村田の顔を見上げ、素直に答えた。

「注射が痛くなかったか心配してくれてたんだ」

彼の声には、看護師との交流が嬉しかったことが伝わってきた。


村田はライトの話を聞きながら、ほっとしたように微笑んだ。

「そうか、優しい人でよかったな」

彼の言葉には、ライトが優しい人に囲まれていることへの安心感が込められていた。

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