第45話_採血

「では採血を始めますね」

彼女の声は穏やかで、患者を安心させるような柔らかさを持っていた。


村田は左手を差し出し採血を受け入れた。

注射器がゆっくりと血液を吸い上げると、それは鮮やかな赤色をしていた。

手際良く進められた採血は、特に問題なく終わりを告げた。


次はライトの番だった。

少し緊張しながら腕を差し出すと、看護師は慣れた手つきで採血を始めた。

注射器には紫がかった色の血液が溜まっていた。

それは一般的な赤色の血液とは明らかに異なる色合いだった。

彼の視線が彼女に触れた瞬間、看護師の目は不思議な光を帯び、

一瞬だけ赤く輝いたように見えた。

その変化はあまりにも突然で、ライトは自分の目を疑ったが、

看護師の呼吸が一時的に乱れたのも明らかだった。


その異変に心を揺さぶられながらも、看護師はすぐに落ち着きを取り戻し、

優しく採血が終わったことを告げた。

「はい、終わりましたよー」

という彼女の声には、先ほどの緊迫した空気は微塵も感じられなかった。


ライトは一連の出来事に心を乱されつつも、

「うん..ありがとう」

と小さく感謝の言葉を返した。

彼の心は、この瞬間の不思議な体験と、

看護師の神秘的な反応に、深く引き込まれていた。

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