第44話_診察

病院は城下町の中心部に佇んでいた。

その建物は年季を感じさせるものの、

丁寧に維持されていることが外観からも伝わってきた。

二人が足を踏み入れると、古びたがどこか安心感を与える受付が迎えてくれた。

受付で事情を説明し、しばらく待機していると二人は診察室に案内された。


診察室の扉を開けると、若い男性医師のイアンが彼らを待っていた。

イアンは村田の症状を丁寧に聞き取り、

二人に対しいくつかの基本的な検査を行った。

そして、最後に血液検査を行うことになった。


「血液検査、ですか?」

村田が問いかけると、イアンは深刻な表情で頷き、

最近の疫病の流行について説明し始めた。


「はい、実は最近、大陸東部で『ルクス病』、正式には『魔素増多症』が流行しているんです」


イアンから以下のような説明を受けた。

血液中の魔素が異常増加し、魔素飽和度が低下することで発症、

発熱、頭痛、嘔吐などの初期症状に加え、

病気が進行すると呼吸困難や筋力低下に陥り、

最終的には体の至る所が異常発熱し、命を落とす危険性があるという。

そして現在まで確立した治療法が見つかっていない。


その説明を受け、村田とライトは深刻な表情を浮かべた。

そんな二人の前に、金髪の女性看護師が優雅に室内に現れ、

村田とライトの前で採血の準備を整えた。

彼女の身にまとう白いスカーフとアイボリーカラーのロングドレスが、

彼女の専門的な技術と温かな人柄を際立たせていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る