第23話_願望

ベルタから受け取った昼食を前にして、

ライトと村田は小さな木製のテーブルを囲んで座っていた。

簡素ながらも心温まる食事は、二人にとって長い一日の小さな慰めとなっていた。


「なぁライト、なんであんな朝早くにキノコなんか食べてたんだ?」

と、村田が穏やかに尋ねながら、ライトの表情を窺った。

彼の声には、ライトの行動への純粋な好奇心と、少しの心配が混じっていた。


「昨日の夜シュンが言ってたじゃないか、身長を伸ばすためには沢山食べることが大事だって」

と快活に答えた。

その言葉には、村田の言葉を真に受けた少年特有の素直さが表れていた。


村田は、ライトの返答に胸が締め付けられるのを感じた。

自分のあの一言が予想もしない結果を招いたとは。

「うっ..そうだったのか。ごめんなライト、こんなことになってしまって..」

と心からの謝罪を口にした。彼の目には、ライトを守る責任を感じながらも、

予期せぬ事態に巻き込んでしまった罪悪感が浮かんでいた。


しかし、ライトは村田の気持ちを察しながらも、

「なんでシュンが謝るの?僕は何ともなかったから気にしないで!」

と明るく返した。

彼の笑顔からは、村田への無償の信頼と、

どんな困難も乗り越えられるという強い精神力が感じられた。


やがて、その会話が続く中で、ライトは再び静かに眠りに落ちた。

村田は、彼の横で静かに見守り続けることを選んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る