第21話_命の危機

村人に案内された空き家に足を踏み入れると、

村田はライトをそっとベッドに寝かせた。

部屋は狭く、質素ながらも温かみのある雰囲気が漂っていた。

彼はライトの安心できる寝顔を見つめながら、ほっと一息ついた。


「すまない、ここしか空いて無くてな。少し狭いが大丈夫か?」

村人が尋ねた時、村田は感謝の気持ちを込めて頷いた。


「いえ、十分です。ありがとうございます」

彼の声には、村人たちの温かい協力に対する深い感謝が込められていた。


「その子、何があったんだ?疲れて寝ているだけか?」


ライトの状況を説明するとき、村田の声にはわずかな不安が滲み出ていた。

「これを食べて具合が悪くなったみたいで..とりあえず今は症状が落ち着いているみたいなんですが」

念のため持参したライトの齧ったキノコを村人に見せる。


村人の反応に、村田は心臓が跳ね上がるのを感じた。

「な!?これは『モルタリスキャップ』じゃあないか!こんなものを食べたのか!」

その言葉に、村田の心中は恐怖で急速に満たされた。


そして村人の答えに、村田の不安は確信に変わった。

「一齧りでもしたら数時間で死に至る最凶のキノコだ!!」

その言葉が村田の心を凍りつかせた。


村田は青ざめ、思わずライトを見つめた。

「そんな、よりにもよって..」

と呟くと、ライトが苦しそうに身じろぎを始めた。


村長に伝えるため村人が部屋を飛び出す。

やがて、村長と村人が戻ってきて、部屋のドアが勢いよく開かれた。

「大丈夫ですk----」


そこにはベッドに横たわり安らかに..ではなく涎を垂らし仰向けで熟睡している少年の姿があった。


「....ん?」

村長の困惑した声が、静かな部屋に響き渡った。


「あ、ガガリアさん..」

村田は、ガガリアの前でどう説明すべきか戸惑い、言葉を探した。


「え..む、村田さん。これは一体どういう状況..」


「普通に寝てるだけですね..これ」


「え..い、一応その彼が齧ったキノコを見せてもらっていいかな?」

ガガリアが尋ねると、村田は手に持ったキノコを差し出した。


キノコを確認すると、彼の顔には混乱が現れ、

「間違いない、それに齧った跡から見るに、もう亡くなっていてもおかしくないはず..」

とつぶやいた。


「..ん~?あれ、ここどこ?」

まぶたを重く上げたライトは、ぼんやりとした眠そうな瞳で周りを見渡す。

ライトの声はまだ眠りから完全に覚めていないようで、

彼の瞳には混乱と好奇心が混じり合っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る