第10話_思わぬ来客
訪問診療から疲れた足取りで戻ってきた村田とグレイスの目に、
診療所の入り口で待っていたライトの姿が飛び込んできた。
ライトの顔にはいつもの明るい笑顔が浮かんでいたが、
その笑顔の裏にはわずかな痛みが隠されているように見えた。
「おかえり!」
ライトの声が診療所の静けさを破った。
彼の声はいつも通り元気いっぱいで、何事もなかったかのように聞こえた。
「ん?何してんだライト」
村田はライトの姿に少し驚きながらも、友人の無事を確認して安堵の息をついた。
しかし、すぐにライトの足元に視線を落とし、その異変に気づいた。
「実は特訓中に転んで膝をすりむいちゃって、ほら」
とライトが少し申し訳なさそうに、しかし得意げに膝を見せた。
一人で魔法の特訓をしているときに怪我したみたいだ。
「はいはい、ライト、中へ入ってください」
と促すと、ライトは少し安堵の表情を浮かべ、診療所の中へと足を踏み入れた。
グレイスの声には、長年医師として培った患者への深い配慮が感じられた。
「うん、あ、そうだ!今日はせっかくだしシュンに診てもらいたいなー」
とライトが提案し、期待に満ちた目で村田を見つめた。
その瞳には、新しい仲間として村田に自分のケアを任せたいという信頼と、
彼との絆を深めたいという願いが込められていた。
グレイスが冗談めかして
「..ライト、まさか村田さんのためにわざと怪我したんじゃあないでしょうね?」
と言うと、
ライトは
「ち、違うよ!」
と慌てて否定した。
その反応に、二人の間には軽やかな笑いが広がった。
村田は手を洗い、ライトを椅子に座らせ、傷口を水で丁寧に洗い流した。
彼の手つきには、かつての医療経験が生きており、
患者に対する細やかな気配りが感じられた。
「ん..」
彼の眉間には疑問のしわが寄った。
紫がかったライトの血の色に一瞬違和感を覚えたが、
今は治療を優先することにした。
治療が終わると、ライトは心からの感謝を込めて
「ありがとーシュン」
「うい、じゃあ治療費はっと..」
と冗談を言って笑いを誘った。
ライトが驚いた顔をすると、村田は
「ふぇ!?お金取るの?」
「冗談だよ、あんま手で傷口いじるなよ」
とやさしく忠告した。
そのやり取りにグレイスは二人の間の深い絆と信頼を感じていた。
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