第11話_魔法の特訓
数日後、村田とライトは爽やかな空気を背に、
イファスアの街から数分ほど歩いた林へ来ていた。
足元には落ち葉がカサカサと音を立て、彼らの静かな会話が周囲に響く。
広場のような場所には切り株がいくつか転がり、
木の枝には的代わりのフライパンが大量にぶら下がっていた。
村田はこの場所を見渡し、子供の頃に作った秘密基地を思い出すように微笑んだ。
「ここでいつも特訓してるんだー」とライトが言うと、
村田は「静かでいい場所だな」と感心しながら答えた。
村田は近くの切り株に歩いて荷物を置いた。
彼の眼差しは、未知の体験への期待で輝いていた。
「よいしょ、じゃあ早速始めるからよく見ててね」
とライトが言うと、村田は黙ってうなずき、
目をしっかりと開いてライトの動作に注目した。
ライトの顔つきが一変し、真剣な表情を浮かべる。
人差し指を少し前に突き出すと、真っ赤な炎がふいに現れた。
それをフライパン目掛けて放つと、
見事命中し「カコンッ」という心地よい音が響いた。
続けざまにマシンガンの如く残りのフライパンに当て続ける。
「こんな感じ!」
とライトは得意げに言い、村田は驚愕と感嘆の表情でその場面を見つめていた。
正直木が燃えないかという心配もあったが、
ライトのコントロールの精度は村田を安心させた。
村田はライトの魔法の才能に感心しつつも、自分自身の無力さを痛感していた。
「なぁライト、俺にも魔法って使えるのか?」
「..なんかシュンからはできるって感じがしないんだよねー」
純粋な子供からのストレートな発言に村田は少し傷ついた。
彼の表情は一瞬曇り、
「うっ..そうか、センスないのか俺..」
と落胆した声を漏らした。
「そうだ!ならシュン的になってよ!」
ライトの突然の提案に、村田は驚きと戸惑いを隠せなかった。
「..は?」
と彼は困惑の声を上げた。
「動く的が欲しいなーって思ってたんだよねー」
彼の目には、無邪気ないたずら心が輝いていた。
「お、おいライト、勝手に話を進めるんじゃ----」
ライトは村田に向かって火を放つ。
反射的に身を避けた村田は、ライトの不意打ちに驚いた表情を浮かべ、
「あっぶねぇな!燃えるだろ!」
と叫んだ。
彼の目は驚きで大きく開き、慌てて身を守る動きをした。
「ほら避けて避けてー!」
ライトは楽しそうに叫びながら、次々と炎を放っていく。
彼の動きは軽やかで、その子供らしい無邪気さが際立っていた。
「ちょっまじか..」
と村田が小さく呟きながら、木を遮蔽物にして巧みに避けた。
その時、彼は急に気づいた。
「ん?木を遮蔽物に..火....」
「おおぉい!燃えとる!」
と村田はパニックに陥りながらライトに叫んだ。
火が木に燃え移り、煙が立ち込め始めていた。
ライトに伝えようと木から顔を覗かせた瞬間、突然顔面に物凄い水圧がかかる。
「燃えてぶべぇ!」
村田は目をこすりながら状況を把握しようとした。
どうやらライトは水の魔法を使い、火を消したみたいだ。
「いぇーい、僕の勝ちだね!」
とライトは満足げに叫んだ。彼の顔には勝利の笑みが浮かんでいた。
村田は一瞬固まった後、ライトの事を全速力で追いかけ始めた。
「こんのクソガキがぁ!」
彼は濡れた服を気にすることなくライトの事を物凄い形相で追いかける。
ライトの魔法といたずら心に振り回されながらも、
なんやかんや村田はこの新しい世界での日々を楽しんでいた。
そしてこの特訓メニューは今後頻繁に行われるのであった。
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