第5話:ペッパーの心配事。

結局、オーベルジュのホテルの部屋で休憩はしたけどなにも起きなかった

わけで、まるっきりペッパーの取り越し苦労で終わった。

尚太郎は案外紳士的だった。


酔ってふらついてるペッパーを襲ったりなんかしないのだ。

って言うか、そんな大胆なことができる男じゃないってことかな。

だからペッパーはなおさら尚太郎に好感をもった。


酔いが覚めたペッパーは尚太郎に自宅まで送ってもらった。


「おやすみなさい・・尚ちゃん、今日は楽しかった」


「僕もだよ、ペッパー・・・よかったら来週また会ってくれる?」


「うん?・・・分かった」


「次のお迎えは待ち合わせじゃなくてペッパーの実家の前に車を横付け

するから・・・」

「じゃ〜またね、おやすみ」


そして中古の軽四野乗って尚太郎は帰って行った。


ペッパーこれから本格的に尚太郎との時間が始まるんだって思った。


(だから絶対ヒューメリアンだってバレないようにしないと)

(尚ちゃんを失いたくないから)


さて絵留萌の会社は、少し変わっていて社員同士があまり干渉しない。

みんな個別に自分の持ち場で働いていて誰かに余計な気をつかうことはなかった。


店でお客さんを相手に愛想を振りまいて平凡でなにもなかったペッパーの日々に

明るくて暖かな陽が差し始めていた。

やはり人は誰かとコミュニケーションを取って生活にハリを持たないと孤独に

なってしまう。


だからこそ、尚太郎からの誘いはペッパーにとって、この上もなく有意義なこと

だった。

その後も尚太郎とペッパーは揉めることもなく喧嘩もなく順調よく付き合って

行った。


映画を観に言ったりディズニーランドやディズニーシー、水族館に美術館・・・

レストランで美味しいもの食べて・・・楽しそうなところは軒並みデートの

場所になった。


尚太郎とペッパーが付き合い始めて約3ヶ月。

その間にペッパーの敬語もタメグチに変わっていて普通の恋人同士だって

言ってもよかった。


この頃からペッパーは自分がヒューメリアンだってことを尚太郎に内緒にした

まま付き合ってることが気になりはじめていた。


(このままでいいのかな?・・・私、尚ちゃんを騙してる?)


これが人間同士なら、なんの問題もなかったんだけどね・・・。

このままだといつかはペッパーが宇宙人と地球人のハーフだってことが

尚太郎にバレてしまう時が来そうって・・・いつか真実を告げなきゃいけない

日が来るんだろうなって思った。


尚太郎がどんな反応を示すのか・・・ペッパーはそれが怖かった。

もし、このまま尚太郎と結ばれることになったら、結婚したあとで自分の

正体が尚太郎にバレることが一番最悪なこと。


(もし、そのことで尚ちゃんが私から離れて行っても彼を恨んだりしない)

(でもそれは死ぬほど悲しいことだよね・・・)


つづく。



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