第3話:え?いきなりホテル?・・・。

夕方四時頃、ペッパーは尚太郎と約束の駅前のパンダの前で待ってるとすぐに

尚太郎がやってきた。


(私がヒューメリアン「宇宙人と地球人のハーフ」だってバレないよう、びっくり

したり驚いたりしないよう気をつけないと・・・)


「お待たせ、ペッパー・・・待った?」


「こんばんは、尚太郎さん・・・私もさっき来たところ」


「あのさ・・・そろそろ尚太郎さんじゃなくて、尚とか尚ちゃんとかって

呼んで欲しいかな」


「そう・・・じゃ〜・・・尚ちゃんで」


「ウェイトレス姿も可愛いけど、今日のそのワンピースよく似合ってて

めちゃ可愛い・・・」


のんびりしてるくせに彼女を褒めることも忘れない気配りの男。


そんなことあまり言われたことなかったからペッパーは嬉しかった。

一応自分自身のため、尚太郎のため今夜はお洒落してみた。

季節に映えるブルーのワンピース・・・よく似合っていた。


これから高級レストラン?って思うとペッパーは少しドキドキした。

男性と一度もまともにお付き合いしたことないので尚太郎について行く

しかなかった。


「じゃ〜と、まだ少し時間があるから、とりあえずディナーの前に知り合いの

カフェに寄ってから行こう」

「この先の路地に洒落たカフェがあるんだ・・・」


「はい、どこでもついていきます」


駅前から商店街を抜けてふたりはカフェへ。

カフェの名前は「ひっそりたたずむ珈琲屋さん」・・・可愛い店名。


「このお店よく来るんですか?」


「うん・・・僕のイトコが経営してるんだ」

「そうだ、今度からこのカフェで待ち合わせしようか?」


「今度から?」


「そうだよ・・・できたら次のデートの約束して欲しいからね・・・」

「いいでしょ?迷惑じゃないよね」


「いえ、迷惑だなんてそんなことありません」


「じゃ〜決まりだね」


そしてこのカフェ「ひっそりたたずむ珈琲屋さん」が尚太郎とペッパーの

定番の店になって行く。


ふたりは「ひっそりたたずむ珈琲屋さん」で本格的コーヒーを仲良く

飲んで時間を潰した。


「それじゃ、そろそろホテルに行こうか?」

「僕、駅の駐車場に車止めてあるから、そこまで歩こう」


(え?・・・ホテル?・・・ホテルって言った?)

(レストランでディナーじゃないの?)


「あの、ホテル?」


「そうだよ、ペッパーどこでもついてくって言ったよね」


ペッパーはまじかと思った。


「ホテルって?・・・」


「ホテルはホテルだよ」


「あの尚ちゃん・・・ディナーのお誘いじゃなかったの?」

「それでホテルって早くない?」

「って私、ホテルなんて聞いてないし・・・」

「そりゃ、お付き合いしていってお互い恋人どうしになってそろそろいいんじゃ

ないって関係になったらホテルだってあるかもしれないけど?・・・・」


「ペッパー・・・一人で何ブツクサ言ってるの?」


「えっ?・・・ああ、そうね、とにかくホテルなんてダメですよ」


「え?・・・・ダメなの?」


「私、そういうつもりで来たわけじゃないから」


「それはないよ、ペッパー」


「尚ちゃん・・・最初っから私の体が目的だったの?」


「はあ?なに言ってんの?」


「もし、そういうことなら私、帰らせていただきます」


「帰るって?・・・今更?・・・なんで?」

「ああ・・・そうか・・・あ、なるほどね・・・ごめん・・・まじでごめん」

「・・・・・くっ・・くっ・・・あはは、可笑しい」


「なにが可笑しいんですか?・・・」


「ペッパー、めっちゃはやとちりしてる・・・」


「はやとちり?」


「あのさ、俺の言い方が悪かったんだけど・・・オーベルジュだよ」


「え?オーベルジュ?」


「オーベルジュって知らない?」


「聞いたことはあるけど、それ以上は・・・」


「オーベルジュってのは郊外にあって食事がメインのホテル付きのレストランの

ことだよ」

「今から、そこにペッパーを連れてディナーを食べに行こうと思ってるんだけど・・・」


「え?・・・ホテルに、その・・・エッチいことしに行くんじゃ?」


「あはは・・・なに言ってるの」

「エッチいって・・・僕はいきなりペッパーをホテルになんか連れ込んだり

しないよ」

「ペッパー面白すぎ・・・ますます君のことが好きになっちゃった」


「オーベルジュだからね、ホテルもたしかに付いてるけどメインはあくまで

食事だから・・・」


「オ、オーベルジュ・・・ああ、そうオーベルジュね」


ペッパーひとりで騒いで、はやとちりした自分がめちゃ恥ずかしかった。

ビックリしたから思わず、正体を現しそうになった。


「さ、行こう」


駅前まで行くと尚太郎は一台の軽四を指差した。


「これ、僕の愛車」


尚太郎は車には、いっさい興味がないタイプ。

だから愛車も普通の可愛い軽四の中古だった。


つづく。


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