高校
第8話 恋
アイとルナは別々の高校に進んだ。
3年間成績トップクラスだったルナは、希望の公立高校に合格した。
勉強があまり得意ではなかったルナは、近所の公立高校へ進学を希望したが、それも叶わず、滑り止めで受けていた私立高校に進学した。
アイは、そのことをずっと気に病んでいた。
「アイ、ちゃんと真面目に勉強してこなかったから、おにいちゃんに迷惑かけちゃったな。。」
「アイ、いつまでそんな事気にしてるのよ。済んだことは変えられないんだし、高校でしっかり学んで、"兄孝行"できるようにするしかないでしょ?」
「兄孝行!アハハ、面白い!」
曇っていたアイの顔が明るくなった。
結局、中学で彼氏ができなかった2人は、いまだに昌樹のことを「おにいちゃん」と呼んでいた。
「ねぇアイ、相談があるんだけど」
「何?どうかした?」
「実は、クラスの男の子に告白されて、迷ってるんだよね。」
「えっ!?本当!?どんな人??」
「なんか、優しくて、いつもニコニコしていて、私が冷たくしても変わらずに温かく接してくれて‥」
ルナは照れながらぼそぼそと喋る。
「なんか、おにいちゃんみたいな人だね。」
アイは満面の笑みで答えた。
「ちっ‥違うわよ全然!!!私はね、もっと強いかっこいい人が好きなの!おにいちゃんみたいなヘラヘラした人は、絶対イヤ!!」
ルナは顔を真っ赤にして怒っている。
ルナが優しい人に惹かれるのも無理もない。
2人は幼い頃から、おにいちゃんに、これでもかといわんばかりに甘やかされて育ってきた。
本当の親、いやもしかしたら、それ以上に、おにいちゃんは2人を可愛がって育ててくれた。2人は優しさと安心に包まれて育ってきたのだ。
「付き合ってみたらいいんじゃない?そうしたら、うちにきてくれる人も増えて楽しいし、なんたって、おにいちゃんのことを【お父さん】って呼べるきっかけになるんだし。」
アイは嬉しそうにはしゃいだ。
ルナが中学の時、無意識に口にした
「彼氏ができたら、昌樹のことを、お父さんと呼ぶ」
と言うセリフを、アイはとても気に入っていて、事あるごとにその話を持ち出してくる。
「急に、"お父さん"って呼んだら、おにいちゃんどんな顔するんだろうね!」
アイは楽しそうにクスクスと笑った。
「泣くんじゃない!?感激して。ボロボロと!」
ルナはニヤリと笑った。
「でも、やっぱり今回の彼はなんか頼りなさそうだから、や〜めた。もっと強くてカッコいい人が現れるのを待つことにするわ。」
「えぇ〜?なんでよぉ。せっかくのチャンスなのに。」
アイは不服そうにほっぺたを膨らませた。
ルナは、その可愛いアイのほっぺたを、両手でえいっと押した。
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