第3話 合わせるアイと、あまのじゃくなルナ

「おにいちゃん、明日はバレンタインデーなんだって!知ってる?」


アイは得意げに話す。


「ルナ知ってる!!好きな男の子にチョコレートあげるんだよ!幼稚園でみんな言ってた!」

おにいちゃんが口を開く前に、ルナがすぐに切り返した。

「アイね、シンゴくんにあげようかなーって思ってるんだ。みんなもそういってるし。」

にこにこするアイを冷たい目でルナは見た。

「アイもシンゴくんなの?みんなシンゴくん、シンゴくんって。さくら組には、男の子はシンゴくんしかいないわけ?」


「ルナは誰にあげるの?」

アイが不思議そうに尋ねる。

「シンゴくんじゃない人にあげる。あ!おにいちゃんにあげる!!」

ルナは思い立ったようにおにいちゃんのほうをみて、目を輝かせた。

「あっ!ずる〜い!アイもおにいちゃんにあげる!!!」

「だめ!ルナが先にあげるって言ったんだよ。」

「何個ももらってもいいんだよ。」

「だめなの!」


おにいちゃんは笑いながら2人を両手に抱えた。

「おにいちゃんは、どっちからもチョコもらいたいな〜」

そういっておにいちゃんは、2人を抱えたままくるくると回転した。


「きゃー!!!」

「キャー!!!!!」


床に降ろされた2人は、もう1回!もう1回!とおにいちゃんにせがむ。


「ご飯の支度してからな。待っててな。」

そう言っておにいちゃんはチャーハンを作り始める。


ジュージューという音と香ばしい匂いが部屋の中に広がる。

「そういえば、この前公園にきてたユリお姉ちゃんは、おにいちゃんにチョコくれたの??」


「あはは、よく覚えてたな。残念ながら、もらえなかったよ〜。」

おにいちゃんは困った顔で笑った。

「おにいちゃんの女の子のお友達、すぐいなくなっちゃうよね。」

アイが言った。

「アイ、おにいちゃん、"モテない"んだよ、きっと。"いけめん"じゃないから。」

ルナがイジワルそうに続ける。


「なんだとぉ〜!?こんなイケメン、街中探してもなかなか見当たらないぞ??」

えー!?と2人は顔を見合わせて笑う。


「さっ、チャーハン食べような。」

おにいちゃんはごはんを運んだ。

大きなお皿が1つと、小さなお皿が2つ、見慣れたキャラクターの描かれた折りたたみの小さな机に乗せられた。

「あー!おなかすいた!」

「おいしそ〜!!」



「これ食べ終わったら、明日、おにいちゃんとシンゴくんに渡すチョコレートでも作るか?」

「作る〜!!」

「いっただっきまーす!!」


3人は無邪気に笑いながらカラフルな食卓を囲んだ。

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