幼稚園

第2話 泣き虫アイと、強気なルナ

「ねぇ、さゆちゃん、ピンクのクレヨン貸してー!」

アイはさゆに笑顔を向ける。

「やだ!いまサユが使ってる!!」

「あみちゃん、ピンクのクレヨンかーしーて。」

「やーだ!いまアミ使ってる!」

「じゃあ、終わったらかーしーて」

「アミ次、みうちゃんにかすお約束だから、アイちゃんにはかさない。」


「そっかぁ。」

アイは残念そうにお部屋の隅に行き、ひとりでおままごとを始める。

「アイちゃん、そこどいて!」

「え?」

「アミとリオちゃん、昨日からおままごとする約束してたから!」

「アイも入れてくれる?」

「だめだよ!昨日から約束してたんだもん。お母さん役とお姉ちゃん役だけでいいの。愛ちゃんは別の遊びして。」


「うぅ‥」

アイは涙を堪えてお道具箱の棚の近くにいき、机の影にうずくまって泣いた。


外遊びをしていたルナが戻ってきて、アイのもとにすぐに駆け寄ってきた

「えっ、アイ、どうしたの?」

「アミちゃんたちが、仲間に入れてくれないの。。」

目に涙を浮かべたアイをみて、ルナはすぐさまアミのところへ行き、両手でアミを強く押した。

「私のアイになにすんのよ!!!」

ルナは恐い顔でアミを睨みつける。


「だって、アイちゃんとは約束してなかったからしょうがないでしょ?」

「しょうがなくないっ!!」

ルナはアミのほっぺを思い切り叩いた。

アミも負けじと叩き返す。


「こらー!!ふたりとも、やめなさい!!」

先生が慌てて飛んできた。



-------------



「いやぁ、ルナがご迷惑をおかけして、すみませんねぇ。」

科学館のお仕事を途中で抜け出して、おにいちゃんが迎えにきた。

おにいちゃんは、下がった眉毛と笑った目で、先生に何度も頭を下げて謝っている。

「ルナ、だめじゃないか、ケンカしたら。」

「アミが悪いんだよ!アミが、アイにいじわるしたんだから!」


神坂こうさかさん、困りますよ、こういうことが続くと。相手のお子さん、お顔にひっかき傷がついちゃったんです。よいことと、悪いこと、しっかりおうちでも教えてください。」

「はい、ヤンチャ娘で、すみませんねぇ。」

おにいちゃんはさっきの顔のまま、頭をぽりぽりと掻いて先生に謝った。



おにいちゃんは2人を後部座席のチャイルドシートにのせ、車を走らせた。

「ルナ、かっこいいな!アイのこと、守ってあげたんだな!」

おにいちゃんは、楽しそうにルナに話す。

「そうだよ!アイのこと、仲間はずれにするなんて、許せない!」

ルナはまださっきのイライラがおさまらない様子だ。

「でもな、ルナ、叩いたりひっかいたりするのはダメだ。お友達が怪我したら、大変だぞ。次からは、叩く前に、まずはちゃんとお話ししてみような。」

「‥わかった。」

ルナは少し拗ねながら答えた。



「ルナ、ありがとう。ルナを悪者にしちゃってごめんね。」

アイが謝る。


「いいの、うちらは、双子なんだから!」


ルナはニヤリとして、アイにグーサインを出した。




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