〜Love & Luna〜
タカナシ トーヤ
プロローグ
第1話 愛と月
暗く深い闇が辺りを覆っている。
スピーカーから流れるクラシックに聴き入るおにいちゃんの車の中で、
「バスにのってゆ〜られてる♪ゴーゴー!」
楽しそうなアイに、
「アイうるさい!音楽聞こえないし。しかもバスじゃなくて、今のってるの、車!」
「よし、ついたぞ。」
白い雪が辺り一面に降り積もって、遠くの家の影さえも見えない。
車から降りた長靴のおにいちゃんは、ザクザクと奥まで歩いていき、真ん中の方まで行くと、辺りを一周ゆっくりと見回して、肩から荷物を降ろした。
おにいちゃんのあとを追う2人の足は、一歩踏み出すごとに膝の上まですっぽりと雪に埋まる。
固まった雪の上に降り積もった、まだ積もりたてのその雪は、柔らかくて、手に取るとほろほろと崩れ落ちた。
「この辺でいいか!」
おにいちゃんはそう言って黒い大きな袋から天体望遠鏡を取り出した。
三脚を広げ、深い雪の中に固定する。
「ちびっこ用も持ってきたけど、この雪じゃ使えないかな。」
そう笑いながら、おにいちゃんは子供用の小さい望遠鏡の三脚を横に広げる。
「雪に埋もれちゃうな。」
おにいちゃんは、困った顔をして三脚をたたもうとする。
「いいから、ルナに見せて!!」
ルナはおにいちゃんから小さな望遠鏡を取り上げた。
「おいおい、アイとふたりで使うんだぞ。」
「いやよ、アタシのほうが1日お姉ちゃんなんだから。」
ルナは望遠鏡を両手に抱えて離そうとしない。
「ルナ、いいよ。ルナが終わったら私に貸して。」
アイはニコニコしながらおにいちゃんの望遠鏡の方に向かった。
「おにいちゃん、アイはこっちの大きいので見てもいい?」
「ああ、いいよ。アイは本当に優しくて、いい子だ。」
おにいちゃんはアイの頭を撫で、抱っこすると、大きな望遠鏡をアイに覗かせた。
「すごい!お星様がいっぱいだよ!!」
「あぁ、ここからまっすぐ、右上の方に、大きなお星様が何個か見えないかい?」
「‥う〜ん。いっぱいありすぎて、よくわかんない。」
「よーくみてごらん。3つくらい、特に綺麗に光っているお星様があるんだ。点つなぎをしたら、三角みたいな形にみえるはずだよ。」
「あったー!!!もう見つけた!!!!」
少し離れたところでルナが騒いだ。
「ルナ、もう見つけたのか!さすが、ルナは要領がいいなあ。」
おにいちゃんはそう言ってルナの近くにしゃがみ込んだ。おにいちゃんのおしりが、すっぽりと雪に埋まる。
「三角の上が、オリオン座のベテルギウス。左が、こいぬ座のプロキオン。下が、おおいぬ座のシリウスだ。冬の大三角っていうんだぞ。」
おにいちゃんは楽しそうに話す。
「アイ!ルナはもう見つけたみたいだから、アイもこっちにおいで。」
おにいちゃんに手招かれ、アイはルナのもとへやってきた。
「アイ、貸してあげる。あたしはもう見終わったから。あたしは、
「ルナ、ほんとだ!ルナは、おつきさまだ!!すごいね!」
そう言ってアイは、子ども用の望遠鏡を覗いた。
「すごい綺麗〜!!!!三角はわかんないけど、お星様がとってもたくさん見える!!」
「そうか、よかった。じゃあせっかく遠くまできたし、みんなで雪遊びでもするか!」
「わーい!!」
アイは、地面に積もったふかふかの雪を、たくさん手に取って宙に広げた。
ルナは、雪玉を作って、楽しそうにおにいちゃんにぶつけ始めた。
〜これは、正反対の双子、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます