⑳
それから数日、私はとりつかれたかのように、件の事件を調べるようになりました。私が子どもの頃に比べて、インターネットは遙かに発達しました。そのことを実感したのは、些細なことでも調べれば解決することでも、真偽の分からないニュースを見つけたときでもありません。皮肉なことですが、何となしに調べた、ネエネエのことでした。
彼女が警察に身を差し出し、この国に殺されてからある程度経ったというのに、ネットの世界では彼女のニュースを見つけることができました。匿名の誰かがネエネエを悪く言うのを見つける度に、中にはネエネエの行いを肯定するようなそれらのコメントを眺めれば眺めるほど、私の心はキリキリと音を立てて少しずつ壊されていくような気がしたのです。
この中に、本当にネエネエを理解しようとした人なんて、一人もいやしないことでしょう。
ただ、自分の心のはけ口にしたいだけのくせに。
お前らの意見なんて、きっとありはしないだろうに。
知らない誰かを隠れ蓑にして、自分の意見をさも自分の意見のように言いたいだけのくせに。
あいつもこいつも、何も知らないくせに。
分かろうとも、してないくせに。
私だけ。私だけがネエネエを理解できているの。私のネエネエ。彼女のことを知りもしないやつらに好き勝手言われることしかできない、かわいそうな私の神様。
見れば見るだけ、私の中で怒りだけが増幅されていき、もう見ることさえ嫌になって、私はそこで調べるのをやめました。いいえ、私は今嘘をつきました。本当はそんなことではないのです。もちろんそれも理由の一つではありましたが。
本当の理由は、以前私がお話ししたあの記事が見つかったことです。なんてことはないただのゴシップ記事ですから、特段盛り上がっているということはありませんでしたし、そこにはコメントなども見当たりませんでした。
それでも、その記事を見た瞬間、私がネエネエにあの質問を投げかけた日のことがより鮮明に思い出されて、私は喉がきゅっと詰まって息ができなくなりました。胸の奥深くに、永遠に溶けない氷でできた太い針を刺されたかのような心地がして、私はもう画面を直視することができませんでした。お前は決してあの日からは逃げられないんだぞと言われているような気がして、私は逃げるように力任せにノートパソコンを閉じました。
言い訳を繰り返していたんです。本当は平気なフリをしていただけなんです。私はネエネエとは血が繋がっていない。その事実が今も私を苦しめるのです。私はネエネエのことを忘れたことはありません。寝る前は必ずネエネエのことを想いながら眠ります。それでも、あの日のことだけは、極力見ないふりをして。仮に何かがきっかけで思い出しても、適当な言い訳で気持ちを落ち着けながら、今まで生活をしてきました。
インターネットは便利だと言いました。本当に便利になったと思います。些細なことでも、私を過去から逃がしてはくれないのですから。
あぁ、こうしている今でさえ、胸が苦しくなるので、この話はここまでにさせてください。
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