第59話 麺類との出会い
「それじゃあ、どんな食材があるか確認しますか」
私とエルドさんはケミス伯爵の料理を作るため、使用人の方に厨房に案内してもらっていた。シキは厩舎の方で馬車を引いていた馬と一緒お留守番をしてもらっている。
多分、飽きたら狩りにでも行ってくるだろうし、そんなに暇をすることもないだろう。
魔法の調味料を生成するという理由から、この屋敷の料理人たちには入らないでもらっているため、厨房には私とエルドさんの二人しかいなかった。
私一人でもできないことはないが、他の使用人たちのご飯もできたら作って欲しいと頼まれたので、エルドさんに協力してもらうことにしたのだ。
頼んだら本人もルードさんから貰った包丁を使ってみたかったらしく、ノリノリで手伝ってくれるとのことだった。
とりあえず、何を作るのかを決めるため、私たちは食品庫の方に向かうことにしたのだが、そこに置かれている多くの食材を前に、私たちは少しの間言葉を失っていた。
野菜やお肉などの他にも初めて見るような食材が並んでおり、私は種類の多さに感心していた。
「凄い種類ありますね。美食家なんでしょうか、ケミス伯爵って」
「それもあるかもしれないけど、多分俺たちのために用意してくれたんじゃないか、これって」
「え、さすがにそんなことは……」
そんなことはないだろうと言いかけた所で、私はケミス伯爵や使用人の人たちの私たちへの態度を思い出していた。
他の領土から招いた奇跡の料理人。そんなふうに思われているとすれば、失礼がないように多くの食材を揃えたりするかもしれない。
どうしよう、めんつゆで『お雑煮スープ』でも作ろうと思っていたのに少し凝ったものを作らないといけないかもしれない。
これは、何を作ればいいか悩まされてしまう。
まさか、逆に食品庫を覗くことで迷う羽目になるなんて思わなかった。
というか、凝った物なんて私に作れるのだろうか?
「何か凝ってる風の物を作れるのがベストですけど……あれ? え、エルドさん、これなんですか?」
主食はどんなのがあるのかと思って確認してみると、そこには少し太い麺類のようなものがあった。
見覚えのあるような主食を前にした私は、少しテンションを上げながらエルドさんにそれを見せて尋ねていた。
「ん? ああ、それは『穀麺』だな」
「穀麺?」
「パンとかに使ってる穀物を麺にしたものだ。確か、シニティーって昔から穀麺を使った屋台とかもあった気がするな」
なるほど……まさか、米だけでなくて麺まであるとは。
まぁ、パンがあるのだから、主食のパターンとして麺があってもおかしくはないか。原料は小麦で同じだしね。
私はエルドさんの返答を受けたうえで、【全知鑑定】のスキルを使ってその麺がどんなものなのか鑑定することにした。
私が【全知鑑定】のスキルを使うと、何もない所に画面が現れてそこに穀麺に関する情報が表示された。
【穀麺(太)……穀物からできている麺。日本のうどんとほうとうの間のような麺】
おお、全く知らない感じの味だったらどうしようかと思ったけど、案外馴染みある感じの麺みたいだ。
『太』ということは、他にもいくつかバリエーションがあるのかな?
そんなことを考えながら、その穀麺を見ているうちに私は一つのアイディアが浮かんだ。
まさに凝ってる風の料理にふさわしい料理。それを思いついたのだった。
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