第23話 大盛況
「まさか、午前中だけであの量がはけるとはな」
初めての市場への挑戦は思いもしなかったくらいの大反響があって、無事に用意していた分全てがはけることになった。
シキが狩ってきてくれた分がまだアイテムボックスにはあったけど、あそこで解体してまで無料で配る必要はないと思って、私達はエルドさんの家で明日へ向けての話し合いを行っていた。
「宣伝としては十分知ってもらえましたね」
「食べた奴ら、みんな明日買いに来るって言ってたな」
「撤収しているときにも遠巻きで人間が噂していたぞ。『魅惑のソースの店がある』と」
エルドさんやシキから見ても、今日の客さんの反応は中々良かったらしい。
まさか、マヨネーズとケチャップが異世界で魅惑のソースなどと言われるとは思わなかったけど、これだけ反応してもらえるとなると明日がますます楽しみになる。
「明日はいよいよ値段を付けての販売ですね。エルドさんだったら、いくらくらいなら買いますか?」
「うーん、今日の味を知っていれば普通のクックバードの塩焼きの2倍と言われても出すな」
「に、2倍ですか?」
それって、一食分食べるにあたって二食分の値段を取るってことだよね?
さすがに、そんな価格はぼったくりすぎる気がするけど……でも、この世界の人からするとそのくらい珍しくて美味しいものなのかもしれない。
いや、でも、誰も買わなかったときに後から値段を下げるのはイメージ的に良くない気がする。
「それなら、初見の人もいるでしょうし……1.5倍くらいで出してみるのはどうでしょうか?」
「アンがそれでいいなら良いけど、治癒魔法が付与されてる食事なんだぞ?」
「そのことは伏せておこうと思います。治癒魔法なしでいいから安くしてくれって言われたとき、付与しないで作るやり方が分からないので」
魔法を使って作っているだけあって、どうしてもその魔力がマヨネーズやケチャップに残ってしまうのは改善しないといけない点かもしれない。
でも、体に害がない物に返還されるなら、何も問題はないんじゃないかとも思う。治癒されて怒る人もいないだろうし。
あれ? でも、もしかしたら、もっと込める魔法の質を変えたら別の付与もできるかもしれない。
一旦、市場での売り上げが安定したら魔力の質を変えて挑戦してみようかな?
「そういうことなら、分かった。アンの納得する値段でいこう」
「ありがとうございます。まずは、初期費用を取り戻すことを目標に頑張っていきましょう!」
多分、今日の感じを見るに初期費用を取り戻すのはそんなに難しくないはずだ。
だって、原材料費がほとんどかからない商売体形なわけだしね。
こうして、私達は明日への意気込みを誓って、明日の開店に向けての準備を始めたのだった。
そして、翌日。
「なんだこの行列は……」
市場の端にある私たちのスペースに行くと、そこにはすでに行列ができていた。
まだ開店の準備もしていないのに、すでにできた行列にいたお客さんは私たちに気がつくと、待ちわびたとでも言いたげに笑顔で大きく手を振っていた。
その先頭には、昨日一番初めに試食に来てくれたふくよか男性の姿もあった。
「す、すぐに準備に取り掛かるので、もう少しお待ちください!」
私は想像以上に並んでいたお客さん達を待たせないように、エルドさんと急いで開店準備を進めたのだった。
どうやら、昨日の試食が想像以上の反響を生んだらしい。
店を開くと、少し強気のクックバードの塩焼きの1.5倍の値段だというのに飛ぶように売れていき、今日も午前中でお店をしめるくらいの大盛況となったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます