第16話 追加の食材
「そういえば、食材は任せてくれって言ってたな」
「ああ。これだけあれば十分だろう?」
「……十分すぎるな」
私が普通の冒険者としての魔物の倒し方を教わっている最中、シキは暇を弄ばしたらしく食料を取ってくると言ってしばらく姿を消した。
そして、再び私たちの前に現れたシキの口にはエルドさんの二回り以上大きな鳥型の魔物を咥えていた。
数種類の羽毛と発達した脚の筋肉が特徴的な鳥型の魔物。
その魔物は『死の森』付近で見られる大型の魔物中でも、結構好んで食べていた魔物だった。
「あ、イャンバード」
「ああ。やはり、鳥と言えばイャンバードだろう」
「いや、やっぱりって定番ではないだろ。かなり高ランクの魔物だぞ、そいつ」
よく食べていた魔物の登場に心躍らせる私たちに対して、エルドさんは少し引き気味な顔をしていた。
でも、そんな顔を向けられてもその美味しさを知っている私からしたら、涎が垂れてもおかしくない逸品だった。
「確かに、これだけ大きな魔物となると料理器具を持ってきておいてよかったな」
「そうだすね。アイテムボックスにも入りそうですけど、せっかくですからここで食べていきましょう」
私はエルドさんの家から拝借していた包丁を取り出して、さっそく料理の準備に取り掛かろうとしたのだが、どうも包丁でやっていたら時間がかかる気がした。
それこそ、長い包丁か何かで一気に料理できる長さまで切ってしまいたい。
貸してもらった短剣で切るにしては、少し大きすぎる気がするし……解体したいから剣を貸してくれともエルドさんにも言いにくい、よね。
そんなことを考えてちらりとエルドさんの方を見ると、エルドさんは私の視線に気づいたようだった。
「ああ、解体はしたことあるか任せてくれ」
エルドさんはそう言うと、腰から剣を引き抜いて解体を買って出てくれた。
うん、ここはお願いした方がいいだろう。
私は綺麗に食べれる自信はあるけど、綺麗に解体できる自信はないわけだし。
さすがにその食べ方はワイルドすぎるし、少なくともエルドさんの前ではできないだろうけども。
「それでは、俺はもう少し狩りをしてこよう」
「……じゃあ、私は他の支度をしておこうかな」
とりあえず、鶏肉を焼かないとだから火を焚くために薪代わりになる小枝を拾うとして、どんな感じで料理をしようか?
せっかくマヨネーズが作れるのが分かったのなら、マヨネーズを使って料理したい。
鶏肉のマヨネーズ料理……うーん、すぐには思い出せないな。
それよりも、昨日食べた鶏肉を薄く切って塩をかけただけのシンプルな料理が頭に浮かんできた。
あれにマヨネーズ? いや、ただマヨネーズをかけるだけでも美味しいだろうけど、何か足りないような……。
「あの料理を再現できるかな?」
一つ思いついた料理はあるんだど、それができるかどうか分からない。
でも、物は試しでやってみようかな。それに、屋台と言えばやっぱりあの料理は欠かせないし。
そんなことを一人考えた私は、小枝の他にも色々と必要な物を揃えるために辺りを見渡して、森の中を散策したのだった。
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