第13話 創作魔法
「新しい調味料を使って料理の屋台を出したい?」
「はい! マヨネーズとかケチャップを作れれば、それだけで新しさと美味しさで人を集客できるんじゃないかなって」
この世界の食事を食べて思ったけど、やっぱり味のバリエーションが少なすぎる。
そこまで美味しい味を求めていないのかもしれないけど、美味しく食べられるのなら、美味しい方がいいに決まっているし、知らない分異世界の調味料を使ったら衝撃も与えられると思う。
「ん? マヨネーズ? ケチャップ? なんだそれは?」
意気揚々とそんな言葉を口にしたのは良かったのだが、エルドさんに小首を傾げられてしまった。
「マヨネーズは黄色くて卵を使った調味料で――」
そこまで行ったところで、私は説明の所で言葉に詰まってしまった。そうなのだ、それ以上先のことを説明できないのだ。
味の説明とかならできるけど、そういえば、調味料の作り方なんて知らなかった。
だって、日本にいれば大抵の調味料はスーパーとかコンビニで手に入るし、作り方なんて調べたことがない。
どうしよう、ただ味を知っているって言うだけで調味料の再現なんてできるのかな?
そんなふうにマヨネーズの作り方を真剣に考えていると、ふと目の前にステータスが表示された時のようなウィンドウが表示された。
そして、そこには次のような文字が書かれていた。
【全知鑑定 マヨネーズの材料……卵黄 お酢 塩】
え? 鑑定の逆算もできるってこと?
もしかして、これが全知鑑定っていうスキルなのかな?
通常の鑑定だと、物として出来上がっているものの鑑定しかできないイメージがあったけど、先に作りたいものの情報があればそれに必要な物が分かるってこと?
なんかゲームとかで武器を作るときに、必要な素材を教えてくれる表示画面みたいだ。
でも、鑑定ができてもその材料を揃えられなければ意味ないし。
他にある私のスキルで言うと、『創作魔法』って言うのがあったけ? いや、今そのスキル使っても仕方ないか、何のスキルなのかも分からないし。
「はぁ、創作魔法っていうので、調味料を作れたら簡単なんだけど……」
「創作魔法? なんでそんな伝承みたいなこと知っているんだ?」
あと一手足りないという状況を前に、ため息まじりにそんな言葉を口にすると、エルドさんに意外そうな顔を向けられた。
「伝承?」
「ああ。昔、創作魔法っていう魔法を使えた人がいたって話だ。見たことのない魔法を使ったり、食べるだけで元気が出るような見たことのない魔法の料理を作ったと言われている。まぁ、伝承って言うよりもおとぎ話みたいなものだけど」
見たこともない魔法と料理?
創作魔法という言葉とそれらの単語を結び付けた私は、ある一つの可能性を思いついた。
ていうことは、もしかして……
「エルドさん、何か小皿を借りてもいいですか?」
「小皿? 別にいいけど」
エルドさんは突然皿を所望した私に小首を傾げながら、用意してくれた小皿の前に立ってそこに手のひらを向けた。
そういえば、異世界物の小説とかでなんでも作れる主人公が、凄い硬い鉄とか作ってた気がする。
そうだよ。なんでも作れるなら、成分が分かっていれば調味料だって作れるじゃん
そう思った私は小皿に手を向けながら、頭の中でマヨネーズをイメージした。そこに必要な材料と味と触感と香りと舌ざわり。
それを魔力で形成するイメージを膨らませていくと、小皿の上が微かに光った気がした。
そして、その上に乗っていたのは……
「で、できた」
そこにあったのは、私が日本でよく見ていた白みがかかった黄色をしたマヨネーズの姿だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます