面影を探して
鏡に映る自分を見つめる。
両親のことは、顔も覚えていない。
だから、自分が親に似ているかどうかさえわからない。
これまであまり考えてこなかったこと──いや、考えないようにしていたのかもしれない。
自分の親が、どういう人だったのかが、気になるようになった。
これが、大人になるということなのだろうか。
俺はどうやら、母親よりも父親に似ているらしい。
母は歌が上手かったという。
情報は情報を連れてくる。
母の生まれた町がどこなのかも、つい先日知ったことだった。
人から聞いた話を、頭の中でパズルのピースのように並べていく。
「行ってみるか……」
そこで何か新しい情報を得られるなんて、期待はしていない。
ただ、見てみたいと純粋に思っただけだ。
どんな景色を見て、どんな生活をしていたのか。
自分の目と足で、確かめてみたい。
そうすれば、自分の中にある遺伝子が母のことを教えてくれるような気がした。
────鏡の中の自分
2024.11.03.
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