ファイト


 今日の出来事を、ひとつひとつ紡いでいく。

 ぱたんと閉じた日記を引き出しに仕舞った。


 通信端末の画面が光る。

 これから仕事だという、彼からのスタンプがひとつ。

 そうだ、今日は夜勤だと言っていた。



 カーテンを開ける。

 今夜は、月が見えない。





 職場に以前から私に言い寄ってくる男がいる。

 あまりにもしつこいので彼氏がいると言ったら、どんなヤツかとうるさい。

 そこに通りがかった同僚が、私の彼のことをポロッと話してしまった。


「そんな付き合い、うまくいかないよ」

「絶対、浮気してるって」


 嫌いだ。あの男も同僚も。



 あぁ、もやもやする。彼に言ってしまいたい。

 だけど、彼に伝えたところで、どうもできないだろう。


 それぞれの夢を叶えるために、彼と私は遠距離恋愛を選択したのだ。



「ファイト!」と応援している猫のスタンプを彼に送る。


 彼がこれを見るのは、たぶん明け方。





────眠りにつく前に


 2024.11.02.

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