晩秋の帰り道



 少しずつ、少しずつ、色が変わっていくのを実感している。

 街も行き交う人の装いも鮮やかさが抜けていき、渋く落ち着いていく。

 そろそろ冬の足音が聞こえてくるだろう。


 

「来年の今ごろ、私たちはどこで何をしているんだろう」


 呟き、立ち止まる彼女が空を見上げた。

 鱗雲が傾いた陽を帯びている。


 信号待ちの十字路。

 点滅していた信号が赤に変わった。

 前を横切る車の音が、沈黙の気まずさを救っている。


 どう返していいか考えようとしても、頭の中がぐるぐる回ってうまくまとまらない。


 このままでいられたらいいのに。

 ずっと隣にいると言えたらいいのに。


 果たせる自信のない約束をするのは不誠実だ。



「お互い、合格するように頑張ろう」


 歩き出してから、月並みな言葉を返す。


 まずはそこから。

 それをクリアしてからでないと、彼女にこの気持ちを伝えることが出来ない。 

 まだ覚悟を決められずにいる俺には。


────哀愁を誘う


 2024.11.04.


 

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