ふるえる唇



「……まだかよ」

「もうちょっと、待って」


 幼馴染だし、俺の部屋でふたりきりで今さら緊張するなんて、おかしな話だと思う。


 付き合い始めて半年。俺の誕生日。

「なんでも言うこときくよ」と言った君。


 俺だから良かったものの……そんな台詞、他の男には絶対言うなよ。



 君は何度目かの深呼吸をした。

 緊張がこちらにも伝わってくる。

 告白も、彼氏彼女の関係になってから手を繋ぐのも俺からだった。

 もちろん、キスも。


 ただの幼馴染だった頃には、気安く俺に触れてきたのに、この関係になってから、君は自分から積極的に触れてこない。

 恥ずかしいと思っているのは、わかる。

 俺だって恥ずかしいんだよ!


 だから、俺からのリクエストは「キスして欲しい」だ。



 大きく息を吐いた君の手が、俺の手を握る。

 うう。もどかしい。かわいい。そんなに緊張してるなんて。どうしてくれよう。

 いやいや、我慢だ俺!

 いくら焦ったいからって、動くなよ、俺!



────たまには


 2024.03.05.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る