箱庭

 勘当同然で故郷を離れたから、帰省どころか連絡も取ってない。


 成り行きで連絡先を交換した同級生とはメールのやり取りを数回したが、いつの間にか自然消滅。


 職場は仕事をする場所で、それ以上でもそれ以下でもないから、上辺だけの付き合いで充分だ。


 彼氏なんて、正直言って面倒だからいらないし、人生のプランに結婚の文字もない。

 そもそも、血の繋がっている人たちですら、うまく付き合えなかったのだ。赤の他人と一緒に暮らすなんて想像出来ない。




「マイカ! 来てたんだ」

「うん。有給取れたし」

「整理番号何番?」

「マジで? リッカと連番だよ!」

「え、そうなの?」


 推しのライブ会場でだけ会う仲間とは、この関係がずっと続けば良いと思ってる。


 彼女たちとは推しがデビューした頃に知り合った。

 共に歌い、踊り、泣いて笑って、何年もの付き合いなのに、本名は知らないし、年齢も知らない。

 知っているのは、SNS上での名前と、住んでいる都道府県、有給を取りやすい職場かどうかくらい。


 推しがいないと成り立たない関係。

 

 だけど、私にはこれくらいがちょうど良い。




 そう、思っていたのに。



 推しが辞めて数年経っても、私たちはSNSでゆるく繋がっている。




 推しがくれたもの。

 若かりし頃の煌めいた日々と、細く長く続く関係。




────絆


 2024.03.06.

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