告げる三文字

 あの頃は、何の躊躇いもなく素直に言えたのに。

 いつの頃からだろう。

 心にもないことを言うようになったのは。



 俺が目を逸らすのは、君があまりにも可愛いから。

 でも、胸の奥の痛みもあたたかさも、視線を逸らすだけでは消えてくれない。



「ただの幼馴染だって言ってるでしょ!」

 俺たちの仲を揶揄われて、君は声を荒げる。

 目が合った俺から顔を背ける君。耳が赤い。


 もしかしたら、君も俺のことを……?

 いや、さすがにそれは自惚れ過ぎか。



 春からは別々の道へ進む。

 だから、覚悟を決めた。


 ずっと大切にしてきたこの気持ちを、たった三文字に込める。




────大好きな君に


 2024.03.04.

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る