「月が綺麗ですね」


 君は高速バスを使う。

 少しでも交通費を抑えて、会う回数を増やしたいから。



 駅前のバスターミナルまで徒歩四十分。

 ゆっくりと女鳥羽川めとばがわ沿いを歩く。

 絡めるように繋いだ手を離すタイミングを迷う。



 君と離れて暮らしてから初めて知った。

 自分が心配症で嫉妬深いこと。



 あと何年何ヶ月。

 何度も二人で数えてる。




 稜線の向こうにある、二人が育った街へと君は帰っていく。



 この先にあるものを、二人で掴むって決めたから、どんなに辛くても頑張れるんだよ。





 ひとりきりの部屋。

 見上げる月。

 君も見ていると信じて送るメッセージ。







────遠くの街へ


 2024.02.28.

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