ボーダーライン


 まるで蜘蛛の巣に捉われた蝶のよう。

 手首を掴まれ、壁に押しつけられている私。

 目の前にいる幼馴染の、熱を帯びた瞳から目を逸らす。


 今ここで、こいつと唇を重ねてしまったら、たぶんもう幼馴染という関係には、二度と戻れない。




「……こっち向けよ」



 手首を掴んでいた片方の手が外されたかと思うと、その手で前を向かされる。

 抵抗できない力で。だけど、優しく。



 覚悟は、あるの?

 もしうまくいかなかったら、きっとそのあと周囲も巻き込んで気まずくなるよ?


 そりゃ、小さい頃「おおきくなったら、けっこんしようね」と約束したけど……



「俺だけを見て」



 射抜かれて、動けない。



 どうしよう。

 息って、どのタイミングで止めたらいいの?


 もう、目を閉じた方がいい?



 お父さんとお母さん、なんて言うかなぁ……


 隣に住む、ひとつ年下の男の子と、こんなこと……







 そういえば、なんで、こんなことになってるんだっけ?






 絡まる記憶の糸を解けないまま、距離は縮まっていく。




 睫毛長いなぁ……






────現実逃避


 2024.02.27.

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