第6話

終礼が終わると、今日はもう何もないのでほっとした。


進学校ではないと大々的に謳っておきながら、偏差値の高い大学を目指すよう教頭は無言のプレッシャーを朝の礼拝中に度々かけ、だがそのプレッシャーのかけ方がなにかしらの発表という意味の分からないものに変わっている。


いい大学に進学させたいなら、受験に直結した勉強をさせてくれたほうがよほどありがたい。


梓は雪乃と途中まで一緒に帰り、すぐに予備校へ行く。


正直予備校のほうが楽しい。


友達はいないけれど、変に宗教は絡んでこないし、ただ聞いていればいいだけだし、程よい緊張感と開放感もある。


英語、古文、漢文、日本史を受けている。行きたい大学に絶対に入りたい。その一心だ。今日の予備校は英語のみで、なるべく集中して聞くようにした。


夜に帰ってご飯を食べ、お風呂から上がると、疲れを残したまま「沈黙」を読む。


ごく簡単に内容の説明をするとポルトガル人の主人公ロドリゴがキリシタン禁制下の時代、長崎にあるトモギ村で隠れキリシタンに歓迎されるものの、キチジローという人物に密告され役人にとらえられる。



過酷な運命をたどり拷問される人を見て、棄教することを迫られながら神はなぜ沈黙を続けているのかと考える。ラスト踏み絵を踏むとき、ただ沈黙していたのではなく一緒に苦しんでいた、というものだ。


読みえ終えたときには既に午前二時近くになっており、すぐに眠りについた。体力も限界だった。


朝、目を覚ます。

眠っても、なんとなく眠れた気がしない。


毎日六時半に起きるから今日は四時間睡眠。


寝ぼけた頭で朝起きて学校へ行く支度をする。朝食はあまり入らない。母から弁当を渡され、お礼を言って寝不足のまま学校へ行く。眠くても体調は大丈夫だ。


今日は嫌なことがなにもないといい。



(注)・引用 遠藤周作著 新潮文庫『沈黙』

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