第2話
学院長はジョン・クラークというアメリカ人宣教師でプライドが高くいつも威張っているし、進学校ではないのにひとつ上の先輩たちの多くが偏差値の高い大学へ進学したから教頭の内村が調子に乗って朝の礼拝で誇らしげに語り、梓の代にプレッシャーをかけるようになった。
「今年は四十名以上の生徒がマーチ以上の大学に入りました。素晴らしいことです。これも日本という先進国があり、神が与えた教育の賜物です。主よ、本当に本当に感謝します。我が校は頭のいい子が揃っています。今年もまた同じように……」
ということを二十分近く延々と語るのだ。授業は始業式から始めるようになり、卒業式前日までするという。
宿題はもともと多いが、それも受験に直接結びつくような宿題ではなく、とにかく教師が選んだ題目に沿って発表しろ、というものばかりだ。四月から五月までの間に、各教科合計十三回発表しなければならなかった。
ひたすらストレスを我慢している。
他にも生徒の自主性を尊重するという方針で、生徒が行う放課後の放送なども長いし、スカート丈の検査もあるしでなかなか学校から帰してくれないことがある。
丈を気にするくらいなら全校生徒の制服をズボンにすればいいのに。そうすれば冬は冷えなくて済む。
今、予備校も学校の都合で行けたり行けなかったりする。
中学受験をして私立へ行けるという人参をぶら下げられたのに行きたい中学へ行けなかったぶん、大学は行きたいところへ行こうと思っている。どうしても行きたい大学があるのだ。
もう、この学校は嫌だ。早く卒業したい。
あと十か月ほど頑張ればなんとか終わる。
「お母さん、主任にスカート買えと言われたんだけど」
家に帰って、すぐ母にスカートのことを話す。
え? と夕飯の準備をしていた母は顔をしかめた。母は昼間パートに出ているが、梓が学校を終える時間には帰っている。
「お金がもったいないでしょう? もう一年もなく卒業するのに」
「そう言っても主任に買い替えろと言われた」
「届け出しているんでしょ」
「でも買い替えろって」
「もっと反抗すればいいじゃない」
そう言う母の神経もあまり理解できない。
家族関係もあまり良好ではない。
「言っても聞いてもらえなかった」
「なら直接電話をして直談判するわ」
母はすぐに学校に電話をかけて主任と話し合っていた。半ば言い合いをする形で。
「ほら、許可下りたわよ」
電話を切り、母は振り返って笑顔で言う。
学校は保護者には甘いのか、とも考えるが梓は何も言わない。許可をもらっても届けを把握していない誰かしらの教師から呼び止められる。割を食うのは梓なのだ。
悶々とした心理状態で夕飯を食べ、お風呂に入り、勉強をする。
平日は一日五時間勉強していた。休みの日は予備校へ行き、十時間くらい勉強している。でも、なんとなく心は重たい。
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