7. 表へ出やがれ

「とまあそんなわけで、それ以来外に出ていないからそいつがいるのかいないのか分からないのだが、俺は繊細だからそいつの影がいるのか確認する度胸はない。火の灯りであっても影はできるから、夜に一人でいる時にそこにいたら気持ち悪かろう? なんとかならないか、誘鬼ゆうき

 光の当たらない部屋の片隅で膝に顎をのせ、飛鳥あすかはげっそりとつぶやいた。

「ふうん……」

 ひとしきり話を聞いて、誘鬼は顎に手をやった。

「うっかり者のオメーらしいよ。逢魔時にあちら側に踏み込んじまったんだろうさ。そんで何かくっつけてきたんだろうよ」

 そう言って誘鬼は口の端で笑う。

「誘鬼どの、なんとかなるか?」

「なるさ、たぶんね」

 誘鬼は答えると飛鳥の側に控える八重波やえなみに顔を向けた。

「爺や。麻紐、少し貰えるかい?」

「少しとはどれくらいじゃ?」

 八重波の問いに誘鬼は自分の身幅ほどに手を広げる。

「これくらいを二本」

 そうして用意された麻紐の一本を飛鳥の手首に括りつける。

「よし。それじゃ飛鳥、外へ出るぞ!」

「嫌だ!」

 勢いよく立ち上がる誘鬼の提案を、飛鳥は勢いよく拒絶した。

「嫌だじゃねぇよ。オメーは俺の言うことに従って、黙ってついてくりゃいいんだよ。拒否権なんてあると思っているのか。返事はハイだけだ。オラ、とっとと表へ出やがれ」

「コリャ、若君に無礼な真似をするでない! 誘鬼め、コラ」

 誘鬼はチンピラのように城主の息子をひっ立たせると、八重波に扇子でペチペチ叩かれるのなど完全に無視して、屋敷の外へと向かっていった。

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